飲み放題を取り入れて新規顧客を増やそう

飲食店

飲み放題イメージ

今や「飲み放題」というメニューは、高級系のレストラン以外では定番ともいえるほど定着しています。まだ導入していない店舗では、お客様に好きなだけ飲まれると原価割れになるというのを懸念されているのではないでしょうか。しかし集客の上でも、競合店と対抗するためにも、導入は検討せざるを得ない状況です。本文でご説明しますが、実は原価も意外に割れないのです。

ここではその「飲み放題」がお客様からどれだけ支持されているかという現状と、導入に際して気になるメニュー構成、原価問題についてご説明します。

お客様の店選びには飲み放題の有無が影響!?

飲み放題が好きな若者

現在「飲み放題」を導入している飲食店がどれだけかという正確なデータはありませんが、Googleで「居酒屋 飲み放題」を検索すると約2730万件ヒットします。これに対して「居酒屋」での検索は約13700万件のヒットですから、単純に計算すると約2割の居酒屋が、飲み放題を導入している可能性があるということです。

感覚的には、一般の飲食店の中では居酒屋で飲み放題を導入している傾向が強く、また個人店よりもチェーン店や大型店の方が導入しているということが言えますが、おそらく現実の数字としては、飲み放題導入飲食店は2割以上ではないでしょうか。

逆に言えば、競合店がまだ導入していないからこそ、思い切ってメニューに加えれば差別化でき、新規顧客の増加、集客力のアップにつながるとも言えます。なぜ飲み放題を導入すると集客力がアップするかというと以下のような理由があるからです。

・何といってもお得感

たとえば自店舗のドリンク1杯の平均価格を550円とした場合に、飲み放題ではなく2時間の滞在で4杯ドリンクをオーダーすると、支払額は550円×4杯=2200円です。これに対して飲み放題2時間1500円と言うメニューだった場合は、お客様にとっては同じだけ飲んでも支払額は700円安くなります。つまり料理1品分です。

当たり前の話ですが、お客様にとってこれは非常にお得感があります。どうせ飲むなら少しでも安い店にしようという意思が働き、飲み放題導入によって集客力がアップするのです。

・安いことが飲食店選びの基準

「そこまでお客様は安さを求めているのか」という疑問もあるかもしれません。しかしある調査で「飲食店を選ぶ基準」のアンケートをとったところ、以下のようになりました。

第1位 味が良いこと 16.1%

第2位 値段が安いこと 14.2%

第3位 メニューのバリエーションが多いこと 11.7%

第4位 店長・店員の態度に好感が持てること 7.8%

第5位 生ビールがおいしいこと 5.3%

以上のように価格の安さはお店の選択の2番目に重視される要素なのです。飲み放題でいろいろなドリンクが頼めることも含めれば、第3位の「メニューのバリエーションが多いこと」というニーズも満足させることができますから、合わせれば約25%、つまり4人に1人のお店の選択基準を満たせるということです。そうなるとお店選びの基準の第1位となります。

・宴会予算が立てやすい

また飲み放題は特に宴会の集客に威力を発揮します。宴会の幹事が1番恐れるのは「予算オーバー」です。だいたいの宴会の場合、会費は事前に集めますから、予算オーバーをしてしまうと宴会終了時に追加で徴収することになり、非常に大変です。また、その場合「自分は生ビールを2本しか飲んでいないのに、なぜ1000円も追加で払わなければならないんだ?」といった不満が必ず出ます。そうなると、幹事の評価はがた落ちです。

その点飲み放題のある店ならば、料理の方もコースにしておけば絶対に予算オーバーをすることはありません。どうせならそういう店を幹事が選ぶのは当然の流れです。したがって、飲み放題を導入することで、宴会の集客も狙えるわけです。

飲み放題をして原価は大丈夫?

原価をみるイメージ

冒頭で触れたように、飲み放題を導入していない理由は、好きなだけ飲まれて原価割れをしてしまう懸念があるからでしょう。その点も意外に大丈夫だということをご説明します。

「十分酔ってきたな」でビール4杯

まず飲み放題で好きなだけ飲むと言っても、それが実際にはどの程度なのか、という問題です。アルコールの血中濃度(%)によって、人間の「酔い加減」は当然変わってきます。それは一般的には以下のようなレベルです。

0.02~0.04:まだ酔わない状態

0.05~0.10:ほろ酔いになってきた状態

0.11~0.15:「十分酔ってきたな」という状態

0.16~0.30:「かなり酔っぱらったな」という状態

0.31~0.40:泥酔状態

0.41~:飲みすぎてつぶれている状態

このうち「十分酔ってきたな」という血中アルコールの濃度は、生ビールで言うとどれくらいでしょうか。血中アルコール濃度は以下の計算式で算出できます。

血中アルコール濃度(%)= 飲酒量(ml)× アルコール濃度(%)/(体重(㎏)× 833)

この式から「十分酔ってきたな」という血中アルコール濃度0.15%になるためには、アルコール度数5%の生ビールは何杯飲まなければならないのかということを逆算すると、

0.15% ÷(5% ÷(65kg × 833)≒ 1600ml

になります。だいたい生ビールは、1杯400mlから多い店で450mlですから、1600mlは生ビール4杯分にあたります。

つまり、飲み放題だから思い切り飲もうという人もいるでしょうが、と言って身体に無理をしてまでは飲みませんから、生ビール4~5杯が平均なのです。「意外に飲まない」という印象ではないでしょうか。

4杯飲まれても原価割れはしない

では仮に飲み放題1500円の料金で、平均4杯のドリンクが飲まれたとした場合で原価のシミュレーションをしてみましょう。

だいたいのお客様は生ビールばかりは飲まず、「ビール→ビール→ハイボール→グラスワイン」といったかたちでオーダーします。1杯の原価をビール150円、ハイボール130円、グラスワイン75円、カシスオレンジ70円、梅酒65円とすると、合計の原価は505円で、原価率は34%です。仮にもう1杯生ビールをオーダーして全部で5杯飲んだとしても、原価率は44%です。その一方で、女性カクテルや果実酒が好きな人も多く、「カシスオレンジ→梅酒→梅酒→梅酒」といった飲み方の場合で原価265円、原価率18%です。

全体の原価は、このそれぞれのお客様の飲んだドリンクの原価の合計になりますから、だいたい30~35%で飲み放題の原価は収まるということなのです。つまり原価割れはほぼあり得ないのです。

定価ベースで飲み放題料金を超えても大丈夫

もう少し違った切り口でもご説明しましょう。

たとえば地酒など少し希少なラインナップも入れた2,000円の飲み放題で提供している飲食店で、6人のお客様が定価ベースで19,000円分の日本酒の飲んだとします。この時飲み放題としての売上は12,000円です。少なくとも、定価ベースではお店側が7,000円の負担をしたわけで、経営者としては不安になります。果たしてこのまま飲み放題を続けても大丈夫なのか、と懸念するでしょう。それについては以下のように分析できます。

定価19,000円の原価は、原価率30%だとして5700円です。この場合粗利が6300円です。1人のお客様から約1000円の粗利があがったことになります。これは通常でいえば1500円分の売上から発生する粗利で、この1500円の売上になるためには、定価で飲んだ場合2~3杯分です。

一方、日本酒のアルコール濃度はビールの3倍の15%弱で、1杯のポーションは150mlの約40%ですから、「十分酔った」という生ビール4杯は、日本酒の3杯にあたり、定価の場合売上は1500円、粗利は1000円です。

つまり、一般のお客様と飲み放題のお客様のドリンクでの粗利は「同じ」ということです。飲み放題導入で、オペレーションの負荷は多少増えますが、お客様は「得をした」「おいしいお酒をいっぱい飲めた」と満足して帰ってくれればリピートも十分見込めます。それでいてお店としてはいつもと同じ粗利が稼げるのでWin-Winです。

このように売上額ではなく粗利額で考えていけば、飲み放題の導入はほとんど原価割れの可能性がないということなのです。

飲み放題に入れる品目を決めよう

飲み放題の品目

「飲み放題を導入しても大丈夫だし、集客を見込めそうだ」と思ったら、具体化に移りましょう。そのためにはまず、飲み放題の中にどのドリンクを入れるかということです。これは自店舗の特徴によってさまざまなケースがありますが、基本的な考え方は以下の通りです。

ケチだと思われないことが大前提

まず、1番避けなければならないのは「この店はケチだな」と思われることです。そう思われたのでは、せっかくの飲み放題の導入がお客様満足とは逆の効果になり、新規顧客の獲得も難しくなります。たとえば原価の高い生ビールを外すということは止めましょう。

また、飲み放題を選んだお客様は原価計算まではしませんから、「これをしたら店が損をするのでは?損をしないように、中身を変えているに違いない」と思います。そして「ビールではなく発泡酒にしているかも」「サワーを薄めているかも」と勘繰ります。そのようなことがないように、飲み放題のメニューでも、定価で販売するドリンクと基本的には同じレシピにしましょう。

品目全体のバランスとしては「割りもの」を増やす

とは言え、生ビールばかり飲まれるよりは、原価の安いものも飲んでもらった方が当然良いわけですから、メニューの品目数の割合としては、ハイボール、サワー、カクテルなどの原価の安い「割りもの」のドリンクを多くするのがポイントです。また、できれば、飲み放題メニューは別POPにして、それらの割りものが目立つようなデザインにしましょう。

2段階に設定する方法も

さらに価格の問題と重複しますが、地酒などを入れてどうしても原価額ベースで高くなってしまう場合は、飲み放題メニューを2つ作る方法もあります。たとえば1つの方には地酒を入れて「プレミアム飲み放題」として2000円、もう1つは地酒を入れない「飲み放題」として1500円でメニュー化するということです。

これの良さは、原価率の悪化が避けられるだけではなく、折込チラシなどで価格を前面に出す場合に、安い方の金額を強調できる点です。極端に言えば生ビールを入れない980円の飲み放題コースを作って、宣伝では「飲み放題980円~」とすれば、かなりのインパクトがあり、競合店と差別化できます。

飲み放題の価格を設定しよう

メニュー価格

品目が決まったら、次に飲み放題の価格設定です。そのポイントは以下の通りです。

・まずはシミュレーションで原価から計算する

価格設定の基本はやはり原価から考えることになります。だいたい平均で4杯から5杯飲むとは言え、どれをお客様が選ぶかによって原価は大きく変わります。できれば、POSデータを活用し、1杯目で1番選ばれるドリンク、2杯目で1番選ばれるドリンクを分析することをおすすめします。難しい場合は、店長の「経験」でシミュレーションをするしかありません。

計算したうえで平均原価が500円になれば、店舗の目標原価率で割り戻して飲み放題の価格を決めればいいわけです。

・「攻めの価格設定」原価悪化分は宣伝費と考える

また、もっと飲み放題を集客の強い武器にしようとするのであれば「攻めの価格設定」もあり得ます。

たとえば、定価でのドリンクの原価率が30%で1人あたりの粗利が1000円だったとします。つまり1500円分いつもはオーダーがあるわけです。これと同じラインナップで980円の飲み放題を打ち出したとしましょう。すると、同じ量のドリンクが出た場合、原価は同じ500円ですから、粗利は480円になって、通常の定価販売と比較して1人あたりの粗利額は520円減ってしまいます。これは「損をした」ということになるのでしょうか。そうではありません。

980円の飲み放題はかなり訴求力がありますから、これを目当てに週末など多くの集客が見込めます。ということはつまり1人に520円かけて集客したということと同じで、この520円は一種の宣伝費だと考えられるのです。

たとえば、1万部の折込チラシを入れたとします。費用は印刷費と折込費でだいたい10万円です。反応率はよくて0.5%程度が平均ですから、50組のお客様の来店が期待できます。1組3人として150人の集客です。10万円かけて150人の集客成功ですから、1人当たりの宣伝費は667円です。

つまり、980円の攻めの価格で「失った」粗利分520円は、宣伝費と考えるとむしろ割安なのです。

・儲けるのは料理の粗利で

そもそも、ファーストフードを除き、居酒屋を含めた一般的な飲食店はドリンクで設けている構造ではありません。実は利益をあげているのは料理であることが多いはずです。

つまりドリンクは飲食店にとっては集客のためのものであって、儲けるのは料理の粗利によってなのです。したがって、飲み放題を導入し、かつ「攻めの価格設定」をしても、それによって新規顧客が増え、リピートが増えれば十分に利益は増大するのです。

飲み放題の時間制限が意外に重要

飲み放題時間制限イメージ

さて、飲み放題を導入するにあたって、品目、価格と同じように重要なのが実は時間設定です。それについては以下のように考えましょう。

回転率を上げられる

まず時間制限は絶対に導入しましょう。なぜならこれは利益をあげてくれる仕組みだからです。ほとんどのお客様は飲み放題の時間が終われば席を立ちます。それはどういう効果があるかというと、お客様の回転率を上げることができるということです。

回転率は自店舗の利益をあげる重要な指標です。特に週末などのウェイティングが出るような満席状態の時には、1組あたり3時間の滞在で1日に2回転するよりも、2時間の滞在で3回転するほうが、1組あたりの単価は多少下がっても、間違いなくトータルの利益は増えます。

原価シミュレーションがしやすくなる

無制限で飲み放題にしてしまうと、お客様が一体どれだけの量を飲むのか全く見えなくなります。飲んでいる時間が長ければ、最初に飲んだアルコールは醒めますので、飲める量は当然増えます。しかしどれだけ増えるのか予測できません。

そうなると、1人あたりの原価も計算できませんから、当然飲み放題の価格の設定も非常に難しくなります。ですから、飲み放題の場合には時間制を入れることが必須なのです。

何時間に設定するのか

ではどれくらいの時間にすればいいのか、というとこれには理論的なガイドラインはありません。ただ、一般的には圧倒的に2時間制が多いのが実態です。先ほどから挙げている、1人平均4杯という数字も、2時間制の場合です。

ただ飲酒をする場合、自然と退席するのは席に着いてから平均2時間半から3時間後です。つまりそれくらいが「十分に飲んだからそろそろ帰ろうか」という時間なのです。そうなると2時間制は「もうちょっと飲みたいな」という設定と言えます。

これをどう考えるのかは、店長や経営者の判断次第です。多少飲み足りなくても、回転率を考えて2時間にするか、うちは十分に飲んだという満足感を重視しようというのではあればそれ以上に設定するのもよいでしょう。

まとめ

飲み放題に参加する人たち

いかがでしょうか。

飲み放題は新規顧客を含めた集客の非常に強い武器になる点、そして意外に赤字にはならない点、「攻めの価格設定」でより集客を強化する考え方がある点、時間制は導入が必須である点、などのことについてご理解いただけたことと思います。

しかしまだ導入には不安が残るという方は、まずは1ヶ月だけ導入してみる、曜日を決めて3ヶ月導入してみる、など期間を区切って挑戦してみてはいかがでしょうか。ここまで挙げたのは、実態を十分に踏まえてはいますが、あくまでシミュレーション、つまり仮説ですので、店舗の特徴によって変わってくる可能性は十分にあります。まずは期間を区切って導入し、終了段階で原価率の変化などを計算したうえで、本格導入の可否を検討したらよいでしょう。

いずれにしても飲み放題は集客の強い武器になりますから、ぜひ挑戦することをおすすめします。

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