ムスリムとは?ムスリムの食事やおもてなしの方法を知っておこう

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ムスリムとの食事

近年、タイやマレーシア、シンガポールなどの東南アジアから日本を訪れる旅行者が増えています。東南アジアはイスラム圏であることから旅行者のほとんどがムスリムです。ムスリムには食事をはじめ生活全般について厳粛な決まりがあり、それに基づいて生活しています。旅行先でもそれはほとんど変わることがありません。

ムスリムのお客様をお迎えする際はどのように対応すればいいのか、ここでは食事の基本的なルールについて見ていきましょう。

ムスリムとは

ムスリムの女性

「ムスリム」とはアラビア語の「神に帰依する者」という意味で、イスラム教徒のことです。イスラム教の聖典クルアーン(コーラン)にはさまざまな行動規範が啓示されています。

たとえば、女性が家族以外の男性に髪や素肌を見せないようにヒジャブという布を巻く習慣がありますが、これは、女性の美しい部分を露出してはいけないという神の教えによるものです。また、毎日行う礼拝の際は、外気に触れた顔や手足を洗い流しますが、不浄なもの、邪悪なものを払い清めるために行うもので、清浄性を重んじるのもイスラム教の特色とされています。 食べ物にしても、食べてよいものと禁じられているものがはっきり分けられています。詳しくは次項で説明しますが、敬虔なムスリムは禁じられている食べ物や飲み物は一切口にしません。

イスラム教についてよく知らない人から見るとタブーが多くて不自由そうに感じるかもしれませんが、ムスリムにとってはそれらは強制ではなく、自己表現であり、生活の指針であるがゆえに大切に継承しているのです。 最近は、ヒジャブがだんだんファッション化して、インドネシアなどではヒジャブ女子と呼ばれるおしゃれな女性が増えているそうですし、日本でもヒジャブファッションショーが開かれたりしています。食習慣においても、よく見ていくとヘルシーな食べ方が多く、ムスリム以外のお客様にもおススメしたいことが少なくありません。

ムスリムの食事について知ろう

ハラールフード

イスラム教には「ハラール(許される行為・物)」と「ハラーム(禁じられた行為・物)」という2つの規範があります。 食べ物も「ハラールフード」と「ハラームフード」が定められており、後者は飲食してはいけないことになっています。その代表的のものが豚とアルコールです。

豚は、雑食性で不衛生な環境で飼育されるため感染症などの恐れがあることから、不浄な動物として食することを禁じられています。ちなみに、インドのヒンズー教では牛を食することが禁じられていますが、牛はシヴァ神の乗り物として神格化されているからで、ハラーム(禁忌)とされる理由はまったく対照的です。アルコールは、酔うと自制心を失い、ギャンブルや危険な行為に及ぶ恐れがあるため禁じられています。

ハラールフードの判断基準として、一般的に次の3点が挙げられます。

  1. 魚や野菜、果物などは天然のものであること。
  2. 肉類はハラールミート(ハラールの飼料で育てられた家畜を、供養の儀式にのっとって屠殺処理したもの)であること。
  3. 見た目や感触が不快感を与えないものであること。

ハラールフードを簡潔にまとめると、「安全、清潔、良質、高栄養の食品」ということができます。次にハラールとハラームの主なものをあげておきますので参考にしてください。

ハラールフード(食べてもよいもの)

・鶏肉、牛肉、羊肉など

ハラールミートに限ります。卵や乳製品もOKです。ただし、不浄なエサで飼育された鶏や牛、羊の場合は、肉も卵もいっさい食することができません。

・天然の魚介類

自然な状態で育てられた魚、エビなど。フグも毒を取り除いたものはハラールです。新鮮な海鮮料理はすべてハラールですが、いか、たこ、うなぎは不快感を覚える人が多いので注意が必要です。

・野菜・果物・きのこ類

野菜や果物は無農薬のもの。きのこも人工栽培ではなく天然ものに限られます。ピーナッツ、こしょうなどもОKです。

・自然の飲み物

天然水、水道水、ハラームの成分が含まれないソフトドリンク、果汁100%のジュースは問題ありません。

ハラームフード(食べてはいけないもの)

・豚肉と豚に由来するもの

豚肉だけでなくハムやベーコンなどの加工品、ラード、豚のエキスが入ったスープやブイヨン、ゼラチンを使ったデザートも禁止です。とんかつを揚げた油で炒めた野菜や魚もNGです。お菓子やクッキーにサクサク感を出すために用いるショートニングも、動物性脂肪と同じ化学構造をもたせた人工的な脂肪なので不可とされています。

・アルコール入りのもの

日本酒、ウイスキー、焼酎、ワインといった飲用のアルコールだけでなく、しょう油、みりん、みそ、醸造酢、ポン酢、マヨネーズなど原料にアルコールが添加されている調味料も禁じられています。ラム酒を使ったお菓子もNGです。

・遺伝子組み換えの野菜

遺伝子組み換えの作物には大豆、とうもろこし、じゃがいもなどがありますが、現在流通しているものはすべて輸入品です。日本では消費者向けの遺伝子組み換え作物は栽培されていませんので、国産の農作物なら安心ということができます。

ムスリムのおもてなしをするときに注意したいこと

ムスリムへのおもてなし

ムスリムのお客様をお迎えするときは、特別な扱いをする必要はないのですが、基本的なルールを押さえておきましょう。

接客するときは

・ウェブサイトや店頭に、「Non-pork dishes are available(ノンポークの料理があります)」と掲示して、豚肉や豚肉由来の成分を含まない料理を提供していることをアピールします。豚のイラストや写真も不快に思うムスリムがいますから、むやみに用いないほうがいいでしょう。

・店内に水着姿の女性のポスターなどを貼っておくのはNGです。BGMを流す場合はナシード(イスラムの宗教歌)がいいでしょう。ムスリム以外のお客様向けにほかの曲を流す場合は、ボリュームを下げるようにします。とくに女性の歌謡曲が苦手なムスリムが多いようです。

・スタッフもできるだけ露出の少ない服装にします。胸元が大きく開いた服や、ノースリーブ、ミニスカート、ショートパンツなどは避けたほうがいいでしょう。

・異性のムスリムとは体が触れることのないよう、適度な距離を保って接客します。女性客に対するサービスは、女性スタッフが行うのがベストです。

・握手はムスリムから求めてきた場合は応じてかまいませんが、自分から求めるのは慎みます。

・席は、個室があればそこへ案内します。ただし、家族以外の男女二人連れの場合は、密室で二人きりになることは禁じられているため、ドアを開けておくようにします。個室がなければ、飲酒するお客様から離れた席に掛けてもらいます。

料理について

・メニューは英語表記が必須です。特別にムスリム向けのメニューをそろえておかなくても、英語表記をしておくことで、自分が飲食できるものはどれかを判断することができます。

・ハラールミート以外でも、豚肉の産地によって食べられるムスリムもいますので、産地をメニューに表記しておきます。ノンアルコールの飲料もメニューに併記しておきます。

・デザートもハラームの添加物が使われていないものを用意し、その旨をメニューに記載しておきます。

・食材から調味料、調理器具、食器、グラス、カトラリーまで、ほかのお客様とムスリム用を分けておけば、ハラール以外のものが混じる心配がありません。

食べるものにとくに決まりがない日本人にとって、ムスリム旅行者に満足してもらえるサービスを提供するのは難しい面があります。最近は、ハラールをテーマにした料理教室も開かれていますが、教室に通う時間がない人は、インドネシア料理店やマレーシア料理店、トルコ料理店、パキスタン料理店などに足を運んでみるといいでしょう。これらの店にはムスリムの料理人がいて、使う食材はハラールフードだけですから、勉強する場としても最適です。

イスラム教礼拝のための準備もしておこう

ムスリムにとって欠かすことのできないのが1日5回の礼拝(サラート)です。1回5~20分程度で、次のような時間帯に行うことになっています。

  • 明け方から日の出まで
  • 正午から昼過ぎまで
  • 昼過ぎから日没まで
  • 日没直後
  • 就寝前

旅行中は礼拝をしなくてもよいことになっていますが、熱心なムスリムはどこでもお祈りできるようにマットを携行しています。場所は時間的余裕があればモスク(礼拝堂)に行きますが、外出先の場合はどこで行ってもよいとされています。

礼拝をする前に必ず水場へ行き、口、鼻、顔、腕、髪、耳、足の順で洗います。これをウド―といいます。お客様がウド―をしたいというときはトイレの洗面台を使ってもらうといいでしょう。足も洗うため台を用意し、足ふきマットも置いておきます。このとき、流水を使うので、まわりが水びたしにならないようにしておくことも必要です。

礼拝は、額を床につけるので清潔な場所に案内します。スペースがなければデパートなどの広めの試着室でもよいとされています。このような要求にもスムーズに対応できるようにするには、前もって用意をしておき、ウエブサイトや店頭に明記しておくことが大切です。

まとめ

ムスリムの女性二人

いかがでしょうか。

東南アジアの旅行者が増えているのは、ビザの条件緩和やLCC(格安航空)の増便などの影響によるもので、今は中国に次ぐ勢いといわれます。2020年の東京オリンピックにはさらなる増加が見込まれます。食習慣が違いすぎるからと敬遠するのではなく、「食べてはいけないもの」を知って、おもてなしの心で温かくお迎えしましょう。