まかないが従業員のモチベーションを上げる?魅力的なまかないとは

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
まかないを食べるスタッフ2人

求職者が重視する条件は「時給が高い」「シフトの融通が利く」などが多いものですが、飲食店でのバイト希望者には「まかない付き」を第一条件にあげる人が大半を占めています。たしかに、美味しい料理をただで食べられるまかないは魅力です。しかし、どんなまかないも「無料で」というわけにはかないのです。一定の金額を超えると所得税を課せられることがありますから注意しなければなりません。

そこで今回は、まかないの魅力とともに、経営者として知っておきたい税務上のルールについて紹介しますので参考にしてください。

まかないとは

まかないイメージ

まかないは「賄い」と書き、食材の余ったもので調理して従業員に提供することをいいます。調理は若手が担当し、料理長が味見をして腕前を評価するという、いわば修業の場という意味合いがあります。最近はベテランと若手の別なく担当制にしているところや、従業員に店の味を覚えさせるために料理長が自ら作って食べさせるところなどもあり、まかないといってもスタイルはさまざまです。

料理内容は余った食材を使うのが基本です。がんばっているスタッフに美味しいものを食べさせたいと思っても、まかないは税金もかかわってくることなので金額を度外視するわけにはいきません。

どういうことかというと、労働の対価として通貨以外の商品や食事などを支給することを「現物給与」といい、まかないも無料で提供すると現物給与とみなされるからです。給与である以上、所得税・住民税の課税対象になります。つまり、まかないは有料か無料かで税法上の取り扱いが異なってくるのです。

次の要件を満たしていれば給与ではなく「福利厚生費」として処理することができるため、課税の対象にはなりません。

  1. 従業員が食事の価格(1か月あたりの食材や調味料などにかかる費用)の半額以上を負担している
  2. 事業主の負担額(上記の金額を差し引いた額)が1人あたり月額3,500円(税抜き)以下である

たとえば、従業員が10人で1か月あたりの食事の価格が50,000円の場合、従業員の負担を25,000円とすれば1の要件を満たします。残り25,000円を1人当たりにすれば2,500円で2の要件も満たしますから、課税はされないことになります。

スタッフのことを考えれば無料にしてあげたいところですが、無料にすると本人の所得税と住民税が増えることになります。新人を採用する際は面接時にこのようなルールがあることをきちんと説明し、まかないを希望する人には食事代を給料から天引きする旨を伝え、了解を得ておく必要があります。

これは実例ですが、スタッフにうまいものを食べさせたいと金額を考慮せずにまかないを提供し続けた結果、税務調査で不正が発覚し、スタッフ10人分で約70万円も追徴課税された居酒屋があります。まかないは本人と事業主が負担する金額によって「福利厚生費」と「現物給与」に分かれることを理解しておくことが大切です。

まかないに力を入れるメリットは?

まかないにこだわる料理人

まかないは料理のプロが作るものだけに味は確かですし、有料といっても低価格ですからほとんどのスタッフが希望します。まかないはただ安くて美味しいだけでなく、次のようなメリットもあります。

  • まかないをスタッフ全員がそろっていただく店の場合は、そこで上下関係の大切さや連帯感の重要性などを知ることができます。
  • ホール担当のスタッフでも、料理人の働きぶりを間近で見ることができ、また、味付けや盛り付けなどの技術的なことを習得することができます。
  • どんな料理にどれだけの材料費がかかるか、どんな工夫をすれば安く上げられるかといったコスト感覚が養われていきます。
  • まかないを食べて店の味を覚えることによって、お客さまに聞かれたときにも味の説明をできるようになります。
  • さまざまな食材を使用するため、栄養バランスのよい食事を摂ることができ、とくに一人暮らしで食事が偏りがちな学生などにとっては貴重な1食といえます。
  • 「仕事がつらくても、まかないが食べられるから頑張れる」「バイトを辞めたいけど、まかないを食べられなくなるから続ける」という人たちがいるように、仕事に対するモチベーションを喚起・維持することに役立ちます。

このようにメリットの多いまかないですが、その一方で「嫌いなものを出されたときはつらい」という意見もあります。どうしても食べられないときは、「今日は体調が悪いので」などと口実をつけて断ってくるでしょうから、そのときは「なんで食べないの。少しでもいいから食べなさい」などと無理強いしないことです。好き嫌いはしかたのないことですし、本人もせっかくの料理を拒否するのは申し訳ないと思っているのですから、気持ちを汲んであげるようにします。できれば、採用する際に好き嫌いの有無を聞いておくといいでしょう。

まかないに満足すれば自然にスタッフの定着率も高まります。定着率がよくなればキッチンスタッフもホールスタッフも共にスキルアップしていき、結果的にお店全体の繁栄につながります。

まかないメニューってどうやって決めたらいい?

まかないに悩む料理人

メニューの決め方はお店によって異なりますが、主なものとして次のようなパターンがあげられます。

キッチンスタッフが考案するパターン

お客さまに出すメニューにはないものをスタッフが考えて作る料理です。といっても、ありあわせの食材を使うことが原則ですから、既存のメニューをアレンジする程度です。まかないではこのパターンがいちばん多く見られます。

既存のメニューから選ぶパターン

お客さま用のメニューから好きな料理を選び、割引価格をその場で支払うか給料からの天引きする方法で、レストランに多いパターンです。 カレーショップならカレー、パスタ専門店ならパスタというように、その店で扱うメニューをそのままままかないにするお店もあります。これはほかの食材の在庫がないからですが、そればかりでは飽きてくるため、たまにごはんものを作って提供することもあります。

自分で作るパターン

中華料理店などでは、自分で好きなものを作って食べるところもあります。金額は200円というように決められていますが、同僚にも作ってあげたりしながら腕を上げていく人もいます。


このほか、予約のキャンセルが出たためその食材を使うケースや、在庫が多い食材の処理を兼ねてまかない飯を作るケースなどもあります。

人気のまかないは「まかない飯」としてメニュー化しちゃおう

メニュー化されたまかない

まかないとして作っていたオリジナルメニューがいつの間にか主力メニューに格上げされ、やがて全国的に広まっていったという料理は少なくありません。

その代表的な例が「オムライス」です。明治33年、銀座の洋食屋「煉瓦亭」で、若手料理人が卵料理の基本とされるオムレツの練習をしていたのですが、当時は品不足で卵も貴重品。無駄にはできないと、溶き卵に肉や野菜、ごはんを混ぜてオムレツの形にふっくら焼き上げ、まかない飯として従業員に出したのが始まりといわれています。

ラーメン店のまかない飯が元祖といわれるのが「つけ麺」です。これは池袋大勝軒のオーナー・故山岸一雄氏が修業時代に作ったオリジナルメニューで、「特製もりそば」として商品化したのが好評で、今の「つけ麺」になったとされています。

そのほかにも、まかない飯が定番メニューに昇格し、「元祖」という名を冠して人気商品になっている例が数多くあります。 近年は、人気飲食店のまかない飯をワンコインで楽しめるイベントや、その地域の名店の隠れた味を再発見するための大会なども開催されるようになり、まかない飯が脚光を浴びています。

先ごろ開催された「anまかないフェス2017」では、創作フレンチとして有名なレストランや、予約が半年先まで埋まっているという人気肉料理店のまかない飯も出品され、大盛況のうちに幕を閉じたとレポートされています。まかない飯をお店の主役メニューに仕立て上げるために、そうした催しに参加して自慢の味を大々的にアピールすることも有効です。

まとめ

まかないを美味しく食べるスタッフ

いかがでしょうか。

飲食店でのアルバイトには食事がつくのは当たり前、それも無料で、と思っている人が多いようです。税法にはあまり縁のない学生なら「食事代を引くなんてケチな経営者」とぼやくかもしれません。しかし、本人が負担すべき金額はきちんと徴収しなければなりません。

適切にまかないを支給し、ぜひ従業員のモチベーションUPや、まかない飯メニュー化へ繋げていってください。