かき氷店って儲かるの?ふわふわかき氷店が人気の理由を徹底検証!

最終更新日: 2021/08/10
飲食店

抹茶味のかき氷

飲食店街を歩いていると、若い女性が行列を作っているお店を見かけたことはありませんか?行列の先にはどのようなお店があるのかと調べてみると、かき氷店であることもしばしばです。かき氷と言えば、イメージ的にはお祭りの屋台や夏の甘味喫茶、自宅のかき氷機でガリガリ作るといった、比較的チープで庶民的なものとお考えかもしれませんが、時代はそのイメージを超えているのです。ちなみに、夏限定ではなく寒い冬でも行列ができるほど、かき氷は人気を博しています。

そこで今回は、かき氷ブームの秘密や利益が出る仕組み、参考にしたいかき氷の人気店をご紹介します。

かき氷のブームとは

マンゴー豊富なかき氷

「かき氷」ブームが、現在どのようになっているのかを概観してみましょう。

現在はかき氷の第3次ブーム

現在のかき氷は、第3次ブームだといわれています。第1次ブームは、甘味処や和菓子店がかき氷を出していた昭和の初期から中期。第2次ブームは、たい焼きや今川焼きなどを扱う店舗や祭りの屋台が、かき氷を扱うようになった昭和50年代以降。そして現在の第3次です。

ふわふわかき氷がブームに

現在ブームになっているものは、屋台で主に提供されるシャリシャリとした食感のものではなく、綿のようにふわふわした氷を使ったものです。現在の売れるかき氷の必須条件は、「ふわふわ」だといえるでしょう。

ふわふわかき氷が出現したのは、1990年代です。埼玉県秩父郡の「阿左美冷蔵」や、栃木県日光市の「松月氷室」といった天然氷の蔵元が販売し始めたかき氷が、ふわふわになったことがきっかけです。従来の色付き水のようなシロップではなく、具材感や果汁感があるシロップをかけたことで、一躍話題となり人気が出ました。

2000年代には、天然氷を用いたかき氷店が首都圏にも続々と登場し、グルメ誌でも取り上げられました。さらに、人気女優の蒼井優が著書「今日も かき氷」を発売したことでさらに人気に追い打ちがかかり、多くの若い女性が夢中になりました。

空前のかき氷ブームを受けて、ミスタードーナツなどの大手企業でもふわふわかき氷を扱うようになりました。

海外店舗の日本上陸

2015年には、台湾の超人気かき氷店「ICE MONSTER」が上陸したことです。「ICE MONSTER」の日本出店は、かき氷ブームをピークに達した瞬間だとといえるでしょう。ICE MONSTERのかき氷は、氷にシロップをかけるのではなく、味のついた氷をそのまま削り取っているのが特徴です。たとえば、マンゴー味のかき氷は、マンゴーの味の氷の中にマンゴーアイスと実際のマンゴーの果肉が入っています。実際のマンゴーも入っているリッチなテイストが人気になりました。

イベントも開催!

多くの人に美味しいかき氷を知ってもらうため、2012年から毎年「かき氷コレクション」というイベントが開催されています。

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かき氷が人気になった理由

大盛りのかき氷

ご紹介した経緯が現在のかき氷ブームの実態ですが、なぜこのようなブームが起こったのでしょうか。

ブームの最大の理由は「インスタ映え」

ブームが起こった理由は、かき氷に店独特の色や形のバリエーションがあって、非常に写真映えする点です。つまり、「インスタ映え」です。女性たちはお店でかき氷を注文すると、食べる前にまず写真を撮って、自分のインスタグラムにアップするのです。かき氷は、SNSに乗りやすい商品であることが最大の理由でしょう。

写真映えする秘密は、ふわふわ氷の上にかけるシロップにあります。シロップは、色付き水ではなく、むしろソースと呼んだほうが良いほど濃厚なもののため、見た目のインパクトにも味のインパクトにもつながっているのです。

体験型スイーツである点も

かき氷は、見るだけではなく当然食べるものです。かき氷の性質上テイクアウトができず、その場で食べるしかありません。つまり、食べるためにはお店まで行かなければならないのです。わざわざ電車や車などに乗って移動をして食べるしかないという、一見不便な点が「体験型」というプラスの要素になりました。結果、「かき氷を食べる」のではなく、「かき氷を食べる体験をする」というレジャーになりました。現代のネット依存の世界の中では、現実世界が新鮮な世界となって人気が出たとも言えるのではないでしょうか。

個性的な幅広いメニューも人気

例えば「野菜」「味噌」「クリームチーズ」など、かき氷のトッピングとしてはあまり馴染みのない食材を使ったかき氷もたくさん登場しており、定番のものから変わり種まで固定観念にとらわれることなく色々な味を楽しむことができる点も人気につながっています。

かき氷店で利益がでる理由

利益の計算

不思議になるのは、かき氷を扱っている飲食店の収支です。氷のような安い商材を仮に大量に販売したとして、利益が出るのでしょうか。収益のシミュレーションで分析してみましょう。

かき氷店はどのくらい儲けられる?

東京三軒茶屋の和食店「和キッチンかんな」では、夏場になるとかき氷を求めた人で6時間待ちの行列を作ります。提供するかき氷は、「いちご牛乳」や「抹茶」などの定番だけではなく、「あずきマスカルポーネ」「ティラミス」などの変わり種も多く、注文数も多いようです。

平均価格は800円前後です。冬でも週末は1日200杯、夏はその数倍の売上になるそうです。単価を800円だとすれば、かき氷だけで冬場にも関わらず1日20万円前後の売上です。この数字を見ると、ちょっとした飲食店に勝ってしまう売上でしょう。

氷の原価は?

原料となる氷の原価をみてみましょう。ふわふわかき氷は、水道水を冷蔵庫で凍らせた氷では作ることができません。天然水を貯蔵プールに満たして、外気の寒気で凍らせた天然氷を用いる必要があります。この製法によって作られた氷は、氷一貫(3.75kg)6,800円です。1貫で約30杯とれますから、1杯当たり226円です。

ちなみに、天然氷を扱おうと思ったら、蔵元と呼ばれる製造元から仕入れる必要があります。天然氷を扱う蔵元は、日本に7軒しかありません。念のため、以下に紹介しておきます。

  • 阿左美冷蔵(埼玉県秩父市)
  • 松月氷室(栃木県日光市)
  • 三ツ星氷室(栃木県日光市)
  • 四代目徳次郎(栃木県日光市)
  • 渡辺商店(長野県軽井沢)
  • 不二(山梨県山中湖村)
  • 八義やつよし(山梨県八ヶ岳)

シロップの原価は?

シロップの原価はどうでしょうか。テイストによっていろいろですが、仮に人気の高い「濃厚抹茶味」を作る場合でシミュレーションします。

濃厚抹茶のシロップの原料と1杯当たりの卸値です。

  • 牛乳200cc 30円
  • 抹茶の粉末10g(500g 3500円) 70円
  • はちみつ30g(1kg 2000円) 60円
  • つぶあん50g(1kg350円) 20円

以上の原価と氷の原価を合計すると、406円になります。良い材料を使えば原価に上限はありませんが、この記事では味で勝負しなければならないということを考慮にいれて、「中の上」クラスの材料を選択しています。

コスト計算

どのお店も1杯1,000円前後でかき氷を販売していますから、仮に売値を1,000円だとしてみましょう。氷とシロップの原価は406円なので、原価率は40.6%となります。飲食店の原価率としては決して安くはありません。これで利益が出るのでしょうか。

粗利を出すには、原価率にさらに一般経費を加えます。

  • 光熱費10%
  • 人件費15%

光熱費を含めた場合、粗利は約35%です。一般的な飲食店の光熱費で計算をしていますが、かき氷店の多くは氷を削るだけで他に調理をしないお店も多いため、その場合はもっと光熱費を抑えることができるでしょう。こうした事情も、かき氷店が利益を多く出すことができる1つのポイントでしょう。

以上の例えをベースに、1ヶ月の売上と利益のシミュレーションをすると以下のようになります。

  • 月間売上:1日100杯×1,000円×30日=300万円
  • 粗利:105万円
  • 家賃:月50万(これはかなり高いほうです。イメージは吉祥寺の30席の店舗です。かき氷は回転がいいので、実際はもっと安くなるでしょう)
  • かき氷機レンタル費:5万円

かき氷の経費の大きな部分は以上になります。これで利益計算をすると、以下のようになります。

  • 営業利益:粗利105万円-家賃50万円-レンタル費5万円=50万円
  • 営業利益率 16.7%

いかがでしょうか。原料費は、個別に交渉をすればもっと落とすことも可能でしょう。家賃も、席数を減らして回転率を上げるようにすれば、かなり安く抑えることが可能ですね。そうなると、営業利益は70万~90万円になります。この場合、営業利益率は30%になります。この数字は、飲食店にとってよいとされている利益率の2倍以上となります。

つまり、かき氷は儲かるのです。かき氷ブームが起こった要因には、飲食店側の事情も見逃せません。

人気のかき氷店を参考にしてみよう!

イチゴの盛られたかき氷

かき氷を導入しようと考えている経営者や店長の皆さんのために、今人気のかき氷店をご紹介します。人気店を調査する際の参考にしてみてくださいね。

和kitchen かんな(東京・三軒茶屋)

「濃厚紫いも牛乳」が、同店の売れ筋です。ふわふわのかき氷の上に、濃厚な紫いもとカラフルなゴマがトッピングされています。女性はいも好きな方も多いので、甘い味わいが非常に人気なのです。

しもきた茶苑大山(東京・下北沢)

抹茶を扱うマイスター制度に「茶師」という名称の資格があり、レベルごとに「段」でクラス分けされています。茶師の中でも「茶師十段」という資格を持つ人は、日本に5人しかいません。その5人のうちのひとりが作ったということが売りの抹茶かき氷が食べられるのが、茶苑大山です。抹茶が美味しいだけではなく、氷も外側と内側で削り方を変えているので、ふわふわでかつ溶けにいのが特徴です。

ほうせき箱(奈良・近鉄奈良)

「カラメルミルクエスプーマカスタード氷」という、超人気メニューがあります。かき氷にカラメルミルクがかかり、その上にラムレーズンがトッピングされています。ちなみに、エスプーマとはスペイン語で泡という意味で、ふわふわ氷を指しています。

氷屋ぴぃす(東京・吉祥寺)

2015年にオープンしたこちらのかき氷店は、フルーツ系からチーズなどのまったり系まで、メニューの種類が豊富なのが魅力です。期間限定メニューも定期的に更新され、リピーターが多い人気店です。フルーツは、契約農家から仕入れた旬のものを使用することが多いとか。

紅茶の専門店 マユール宮崎台店(神奈川・宮崎台)

紅茶専門店が提供する人気かき氷は、アッサムやダージリンといった紅茶のかき氷です。チャイ系のメニューも豊富で、女性としては嬉しいラインナップでしょう。日によって変わるメニューもあり、何度訪れても飽きさせない工夫がなされています。もちろん、紅茶以外のメニューも用意されています。紅茶専門店なので、お店ではたくさんの茶葉も販売されています。

まとめ

和風のかき氷

いかがでしょうか。

利益率が非常に高いのが魅力のかき氷店。ふわふわかき氷ブームはまだ数年続くと予想されます。なぜなら、大手の飲食チェーンがまだ展開しておらず、全て個人店レベルの提供に限られているからです。ふわふわかき氷に特徴のある濃厚シロップをかけ、インスタ映えする概観を演出することを意識して、ぜひとも商品開発してみましょう。