受動喫煙対策とは?飲食店への影響をきちんと把握しておこう

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禁煙の飲食店

タバコを財源の1つとする日本は、受動喫煙の法規制がほかの国に比べて大きく遅れていましたが、ようやく受動喫煙対策法が成立し、2020年のオリンピック開催に向けて全面禁煙化が始まりました。

そこで今回は、受動喫煙のリスクから、飲食店にとって禁煙化はどんな影響があるのか、どんな罰則があるのかなど、受動喫煙対策について詳しく説明していきます。

受動喫煙とは?

タバコを吸うビジネスマンと嫌がるオフィスレディ

他人が吸っているタバコの煙を自分の意思に関係なく吸い込んでしまうことを「受動喫煙」といいます。なぜ受動喫煙が問題になるかというと、タバコの煙には喫煙者が直接吸い込む主流煙と、タバコの先端から立ちのぼる副流煙があり、副流煙は不完全燃焼のため、主流煙よりもはるかに多くの有害物質を含んでいるからです。

タバコには約5,000種類の化学物質が含まれていて、そのうち約200種類が有害物質です。副流煙には、三大有害成分といわれるニコチンが主流煙に比べて約3倍、タールが約3.5倍、一酸化炭素が約4.5倍も多く含まれています。

このような副流煙を吸い続けていると、次のような病気を引き起こす原因になります。

成人の場合

  • がん(肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんなど)
  • 呼吸器疾患(肺気腫、気管支ぜんそく、自然気胸など)
  • 循環器疾患(不整脈、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞など)
  • 消化器疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)

妊婦の場合

  • 早産
  • 低出生体重児出産

子どもの場合

  • 乳幼児突然死症候群
  • 肺機能の低下
  • ぜんそく

近年、煙の出ない加熱式タバコの利用者が増えていますが、煙が出ないから安心とはいえません。加熱式タバコを吸った人はエアロゾル(蒸気)を吐き出します。その中にはニコチンなど発がん性物質が含まれていて2~3メートル先まで拡散することがわかっています。そのため、呼吸器科の専門医は、加熱式たばこも紙巻きたばこと同じように受動喫煙による健康被害を起こしやすいと指摘しています。

厚労省による受動喫煙対策とは

ビールと煙草

厚生労働省では、以上のような副流煙による被害を防ぐために、2018年7月に「健康増進法」を改正し、大勢の人が利用する施設を禁煙とする受動喫煙対策を打ち出しました。これによって病院、小中高・大学、行政機関は屋内に限らず敷地内を禁煙としました。紙巻きタバコだけ出なく加熱式タバコも同様に規制対象となります。

飲食店もこれから新規開業する場合は「原則屋内禁煙」で、煙やにおいが客席に流出しない喫煙専用室を設置することで喫煙が可能です。喫煙専用室ですから、ここで飲食をすることはできません。既存の飲食店は、資本金5,000万円以下で客席面積が100平方メートル以下の場合は、例外として「喫煙可」「喫煙OKです」などと店頭表示をすれば、喫煙専用室を作らなくても喫煙してよいことになっています。

こうした一部施行は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年までの経過措置で、2020年の4月1日から飲食店も全面施行となり、違反すると喫煙者には最大30万円、施設管理者には最大50万円の罰則が科されることになります。

東京都は、国より早く「受動喫煙防止条例」を制定し、店舗の面積に関係なく、従業員のいるお店は原則禁煙とし、従業員がいない小規模な店舗は、未成年者を立ち入らせないことを条件に喫煙可能としています。受動喫煙の害からいちばん守らなければならないのは従業員と子どもたちだからです。

受動喫煙対策の飲食店への影響とは?

飲食店で喫煙

店内を全面禁煙にすることにはメリット・デメリットがあります。愛煙家のお客様は、タバコが吸えないと知るとその場で帰るか、その日は飲食をしてもそれきり来店しないというパターンが少なくありません。

しかし、嫌煙家や子ども連れのファミリー層にとっては入りやすい店となり、客単価や回転率がむしろ上がったというお店もあります。また、「食事をしているときにタバコの煙やにおいは不愉快。法律で禁止してもらえればありがたい」というお客様もいます。その一方、「嗜好品に対して国が規制するのはおかしい。禁煙の店には行きたくない」という人もいます。

このように意見は二分されますが、禁煙に踏み切ったからといって売上が落ちるということはありません。もし、売上が減る一方だとしたら、そのお店は「タバコが自由に吸えること」くらいの魅力しかなかったということでしょう。

日本禁煙推進医師歯科医師連盟が行った「飲食店が禁煙になった場合、利用は増えますか、減りますか」という調査によると、「回数も人数も増えた」「回数が増えた」「変わらない」の合計値が81.2%、「回数が減る」「回数・人数が減る」「わからない」の合計値はわずか18,8%という結果が出ています。これを見る限り、禁煙することでより多くのお客様を取り込むことができると考えていいでしょう。

なぜ、飲食店で禁煙とするのか

禁煙マークが置かれているテーブル

そもそも、なぜ国をあげて飲食店を全面禁煙にするのでしょうか。その理由として次の2点があげられます。

WHOより法規制の後れを指摘された

WHO(世界保健機関)の調査によると、世界188か国のうち49か国が病院や公共機関、飲食店などにおいて屋内禁煙の法規制をしています。日本はその中で最も対策が緩いという結果になりました。

WHOとIOC(国際オリンピック委員会)は「スモークフリー(タバコのないオリンピック)」を謳い、開催国には例外なく屋内禁煙規制を求めています。WHOが五輪開催を控えている日本に対して、「禁煙対策が前世紀並みに遅れている」と指摘したことから、厚労省は、訪日観光客に快適な環境で過ごしてもらうために飲食店など公共の場を「屋内禁煙」とする方針を打ち出したのです。

国内でも禁煙がトレンド

国内を見ても年々喫煙率が減少傾向にあります。JT(日本たばこ産業)の「2017年 全国たばこ喫煙者率調査」によると、男性の喫煙率が28.2%、女性が9.0%で、前年より男性は1.5ポイント減少、女性は0.7ポイント減少しています。

最近は、社員の健康を優先して喫煙者を採用しない会社や、分煙が徹底していてオフィス内では吸えない会社も増えています。飲食店の場合も、受動喫煙のリスクが最も高いのは店内に長時間いるスタッフなので、彼らの健康を守るために全面禁煙としたり、屋外に喫煙専用室を設けたりする傾向が強まっています。

禁煙化をすすめている飲食店を紹介

飲食店の禁煙席

外食チェーン店では、全面禁煙を打ち出すお店が増えています。その代表的なお店を紹介しましょう。

ロイヤルホスト

健康的で明るく、清潔感のある店づくりにこだわってきたロイヤルホストは、21013年に全国228店舗の全面禁煙を実施しました。客層は喫煙習慣のあるビジネスパーソンが多かったことから当初は売上が落ちたものの、週末は家族連れが増え、平日は主婦やシニア層など非喫煙者が増えて3か月ほどで利益は回復。まさに禁煙が売上全体の底上げをしているような効果が得られたといいます。

サイゼリア

全国に1073店舗を展開するサイゼリアは、2018年の7月21日から全国のショッピングセンターに入っている275店舗と京都府内の23店舗から全面禁煙化を開始しました。今後は段階的に進めていき、2019年の9月までには全店舗に広める計画です。

ココス

全国に583店舗を展開しているうち、すでに167店舗を終日全席禁煙にしています。現在一部禁煙としている416店舗も2019年9月までに全面禁煙に切り替えると発表しています。ココスはかねてから分煙を実施してきたのですが、子連れのお客様から全席禁煙を望む声が高まり、終日全席禁煙に踏み切ったといいます。

まとめ

禁煙のマーク

いかがでしょうか?

受動喫煙対策法が2018年7月に成立しましたが、一斉に実施するのは困難なため経過措置が取られています。飲食店の場合は、2019年の夏ごろまでは必要に応じて喫煙専用室の工事などの準備、同9月のラグビーのワールドカップ開催ごろから法令の一部施行、2020年の4月1日より全面施行してオリンピック・パラリンピックを迎えるというのが基本的な施行スケジュールです。詳しくは厚生労働省の「受動喫煙対策」で確認してみてください。