受動喫煙対策とは?飲食店への影響をきちんと把握しておこう

飲食店

禁煙の飲食店

タバコを財源の1つとする日本は、受動喫煙の法規制がほかの国に比べて大きく遅れていましたが、ようやく「改正健康促進法」が成立し、2020年4月1日から全国で全面施行されました。

今まではマナーとして喫煙エリアが設けられていましたが、これからはルールとしてより具体的な政策が提示されています。また時を同じくして東京都では「受動喫煙防止条例」も施行されました。

そこで今回は、受動喫煙のリスクから、飲食店にとって禁煙化はどんな影響があるのか、どんな罰則があるのかなど、受動喫煙対策について詳しく説明していきます。

受動喫煙とは?

タバコを吸うビジネスマンと嫌がるオフィスレディ

他人が吸っているタバコの煙を自分の意思に関係なく吸い込んでしまうことを「受動喫煙」といいます。なぜ受動喫煙が問題になるかというと、タバコの煙には喫煙者が直接吸い込む主流煙と、タバコの先端から立ちのぼる副流煙があり、副流煙は不完全燃焼のため、主流煙よりもはるかに多くの有害物質を含んでいるからです。

タバコには約5,000種類の化学物質が含まれていて、そのうち約200種類が有害物質です。副流煙には、三大有害成分といわれるニコチンが主流煙に比べて約3倍、タールが約3.5倍、一酸化炭素が約4.5倍も多く含まれています。

このような副流煙を吸い続けていると、次のような病気を引き起こす原因になります。

成人の場合

  • がん(肺がん、喉頭がん、咽頭がん、食道がん、胃がん、すい臓がん、膀胱がん、子宮頸がんなど)
  • 呼吸器疾患(肺気腫、気管支ぜんそく、自然気胸など)
  • 循環器疾患(不整脈、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞など)
  • 消化器疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍など)

妊婦の場合

  • 早産
  • 低出生体重児出産
  • 流産
  • 子宮内膜発育遅延

子どもの場合

  • 乳幼児突然死症候群
  • 肺機能の低下(気管支炎、肺炎)
  • ぜんそく
  • 中耳炎
  • 成人してからの肥満、糖尿病、メタボリックシンドローム
  • 少年期からニコチン依存

近年、煙の出ない加熱式タバコの利用者が増えていますが、煙が出ないから安心とはいえません。加熱式タバコを吸った人はエアロゾル(蒸気)を吐き出します。その中にはニコチンなど発がん性物質が含まれていて2~3メートル先まで拡散することがわかっています。そのため、呼吸器科の専門医は、加熱式たばこも紙巻きたばこと同じように受動喫煙による健康被害を起こしやすいと指摘しています。

厚労省による受動喫煙対策とは

ビールと煙草

厚生労働省では、以上のような副流煙による被害を防ぐために、2018年7月に「健康増進法」を改正し、大勢の人が利用する施設を禁煙とする受動喫煙対策を打ち出しました。これによって病院、小中高・大学、行政機関は屋内に限らず敷地内を禁煙としました。紙巻きタバコだけ出なく加熱式タバコも同様に規制対象となります。

喫煙に関してこれまで飲食店の管理者に権利がゆだねられていたため、喫煙ができるかどうかはオーナー次第でしたが、これからは飲食店内での喫煙は違法になります。

飲食店もこれから新規開業する場合は「原則屋内禁煙」で、煙やにおいが客席に流出しない喫煙専用室を設置することで喫煙が可能です。喫煙専用室ですから、ここで飲食をすることはできません。

しかし以下に該当する場合、喫煙が可能です。

  • 2020年4月1日の時点で既存の飲食店
  • 資本金5,000万円以下
  • 客席面積が100平方メートル以下

これらの条件の場合、例外として「喫煙可」「喫煙OKです」などと店頭表示をすれば、喫煙専用室を作らなくても喫煙して良いことになっています。

さらに喫煙を目的とした施設の場合、喫煙が可能です。

  • シガーバーや喫煙を目的とするスナックなど
  • たばこ販売所や(店内でたばこの喫煙が可能なたばこ販売所も含む)
  • 公衆喫煙室

これらの場所でも喫煙可能という標識を掲げることが義務付けられています。また来店客や従業員ともに20歳未満の来店は禁じられています。

違反すると喫煙者には最大30万円、施設管理者には最大50万円の罰則が科されることになります。

東京都で施行されている「受動喫煙防止条例」と国が定めた「改正健康促進法」に少しの差があります。「改正健康促進法」によって規制を受ける対象の飲食店は全体の約45%であるのに対し、「受動喫煙防止条例」はさらに厳しく全体の約85%に当たります。そのため東京都内で飲食店を経営している場合、自分の店舗はどれに当てはまるのかを注意深く検討する必要があるでしょう。また東京都内の飲食店の場合、店舗の面積に関係なく、従業員のいるお店は原則禁煙とし、家族経営など小規模な店舗は、未成年者を立ち入らせないことを条件に喫煙可能としています。受動喫煙の害からいちばん守らなければならないのは従業員と子どもたちだからです。

喫煙可能な4種類の喫煙室

飲食店は禁煙でも、店舗の近くに喫煙可能な場所があれば喫煙するお客様も来店しやすいかもしれません。まずはどんな場所があるかを把握しておきましょう。

喫煙専用室

喫煙専用室は施設の一部に設置が可能です。ここでは紙巻たばこと加熱式たばこの使用が可能です。しかしこの場所では飲食はできません。喫煙専用室は駅や病院など公共施設の近くに設置されることが多いようです。もし経営している飲食店がこれらの近くにあるなら喫煙されるお客様も気軽に来店されるかもしれません。

加熱式たばこ専用喫煙室

この喫煙室は加熱式たばこが限定で使用でき、飲食も可能です。しかし紙巻たばこは使用できません。

喫煙目的室

この場所では喫煙、食事ともに可能ですが、シガーバーやたばこ販売所など特定事業目的施設に限定されています。また、ラーメンや定食などの主食を提供することはできませんが、お酒とおつまみ程度なら提供できます。

喫煙可能室

これは既存の特定飲食提供施設に限定的に当てはまりますが、喫煙室の区分の一部には経過措置も含まれています。そのため今後、規定が変更される可能性は十分にあります。常に最新の情報に通じておくようにしましょう。

もし、お客様に喫煙できるエリアを尋ねられたならどうすれば良いのでしょうか?

JT(日本たばこ産業)が「CLUB JT」という会員向けのオンラインサービスを開始しています。これは位置情報に基づいて付近にある喫煙スポット「喫煙所スポット」が分かるようになっているのでこのアプリを入れていると便利かもしれません。

受動喫煙対策の飲食店への影響とは?

飲食店で喫煙

平成29年度国民健康·栄養調査によると、1か月間で受動喫煙に遭遇した非喫煙者の割合を場所別にみると、飲食店(42.4%)、路上(31.7%)、遊技場(37.3%)という結果が出ています。このことから、飲食店が約半数を占めることがわかります。

店内を全面禁煙にすることにはメリット・デメリットがあります。

嫌煙家や子ども連れのファミリー層にとっては入りやすい店となり、客単価や回転率がむしろ上がったというお店もあります。また、「食事をしているときにタバコの煙やにおいは不愉快。法律で禁止してもらえればありがたい」というお客様もいます。

飲食店経営者からは「店舗側も全面禁煙になったおかげでお客様に自由に座る場所を選んでいただけるようになった」という声もあります。さらにお客様の喫煙が原因で、スタッフの体調が悪くなり、なくなく職場を後にするというスタッフがいましたが、今後は仕事をたばこの影響を受けずに続けられるようになることを考えると、店舗にとっても貴重な人材を失わずにすみます。

その一方、「嗜好品に対して国が規制するのはおかしい。禁煙の店には行きたくない」という人もいます。愛煙家のお客様は、タバコが吸えないと知るとその場で帰るか、その日は飲食をしてもそれきり来店しないというパターンが少なくありません。

ある調査で、お店の環境が喫煙可から禁煙へ変化したという飲食店関係者125名のうち60%が、売上に「特に変化はなかった」と回答しています。また「売上増」は12%、「売上減」は28%、という結果が出ています。

このように意見は二分されますが、禁煙に踏み切ったからといって売上が落ちるということはありません。もし、売上が減る一方だとしたら、そのお店は「タバコが自由に吸えること」くらいの魅力しかなかったということでしょう。

日本禁煙推進医師歯科医師連盟が行った「飲食店が禁煙になった場合、利用は増えますか、減りますか」という調査によると、「回数も人数も増えた」「回数が増えた」「変わらない」の合計値が81.2%、「回数が減る」「回数・人数が減る」「わからない」の合計値はわずか18.8%という結果が出ています。これを見る限り、禁煙することでより多くのお客様を取り込むことができると考えていいでしょう。

なぜ、飲食店で禁煙とするのか

禁煙マークが置かれているテーブル

そもそも、なぜ国をあげて飲食店を全面禁煙にするのでしょうか。その理由として次の2点があげられます。

WHOより法規制の後れを指摘された

WHO(世界保健機関)の調査によると、世界188か国のうち49か国が病院や公共機関、飲食店などにおいて屋内禁煙の法規制をしています。日本はその中で最も対策が緩いという結果になりました。

2020年に開催予定だった日本東京オリンピック·パラリンピックに対してWHOとIOC(国際オリンピック委員会)は「スモークフリー(タバコのないオリンピック)」を謳い、開催国には例外なく屋内禁煙規制を求めていました。WHOが五輪開催を控えている日本に対して、「禁煙対策が前世紀並みに遅れている」と指摘したことから、厚労省は、訪日観光客に快適な環境で過ごしてもらうために飲食店など公共の場を「屋内禁煙」とする方針を打ち出したのです。残念ながら新型コロナウイルスの影響で2020年に開催予定だった日本東京オリンピック·パラリンピックは延期になってしまいましたが、「改正健康促進法」「受動喫煙防止条例」共にすでに施行されています。

また「受動喫煙防止対策徹底の必要性」によると、世界の186か国中、公衆の集まる場(医療施設·大学以外の学校·大学·行政機関·事業所·飲食店·バー·公共交通機関)に屋内全面禁煙義務の法律があるのは55か国です。2017年時点の日本は、屋内全面禁煙義務の法律がなく、最低区分に分類されています。これらを考えると日本の飲食店に受動喫煙対策が施行されたのは必然的だったのでしょう。

国内でも禁煙がトレンド

国内を見ても年々喫煙率が減少傾向にあります。JT(日本たばこ産業)の「2017年 全国たばこ喫煙者率調査」によると、男性の喫煙率が28.2%、女性が9.0%で、前年より男性は1.5ポイント減少、女性は0.7ポイント減少しています。

最近は、社員の健康を優先して喫煙者を採用しない会社や、分煙が徹底していてオフィス内では吸えない会社も増えています。飲食店の場合も、受動喫煙のリスクが最も高いのは店内に長時間いるスタッフなので、彼らの健康を守るために全面禁煙としたり、屋外に喫煙専用室を設けたりする傾向が強まっています。

禁煙化をすすめている飲食店を紹介

飲食店の禁煙席

外食チェーン店では、全面禁煙を打ち出すお店が増えています。その代表的なお店を紹介しましょう。

ロイヤルホスト

健康的で明るく、清潔感のある店づくりにこだわってきたロイヤルホストは、21013年に全国228店舗の全面禁煙を実施しました。客層は喫煙習慣のあるビジネスパーソンが多かったことから当初は売上が落ちたものの、週末は家族連れが増え、平日は主婦やシニア層など非喫煙者が増えて3か月ほどで利益は回復。まさに禁煙が売上全体の底上げをしているような効果が得られたといいます。

サイゼリア

全国に1073店舗を展開するサイゼリアは、2018年の7月21日から全国のショッピングセンターに入っている275店舗と京都府内の23店舗から全面禁煙化を開始、2019年の6月より全面禁煙になっています。既存店の売上高が連続11ヶ月減少しているという報告がありますが、これは全面禁煙が始まる前からこの傾向が見られているため、禁煙が原因とはいいにくいでしょう。

ココス

全国に583店舗を展開しているうち、すでに167店舗を終日全席禁煙にしています。現在一部禁煙としている416店舗も2019年9月までに全面禁煙に切り替えると発表しています。ココスはかねてから分煙を実施してきたのですが、子連れのお客様から全席禁煙を望む声が高まり、終日全席禁煙に踏み切ったといいます。

まとめ

禁煙のマーク

受動喫煙対策法が2018年7月に成立しましたが、一斉に実施するのは困難なため経過措置が取られていました。飲食店の場合は、2019年の夏ごろまでは必要に応じて喫煙専用室の工事などの準備、同9月のラグビーのワールドカップ開催ごろから法令の一部施行、2020年の4月1日より全面施行されています。詳しくは厚生労働省の「受動喫煙対策」で確認してみてください。

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