労務管理はしっかりできている?飲食店でこそ重要な労務管理について

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従業員の労務管理イメージ

世の中では飲食業はブラック企業の典型にように言われています。確かにほかの仕事に比べて拘束時間も長いですが、ブラックかどうかはその労働に対して対価をきちんと払っているか、法律に基づいた休憩や休日を取らせているかどうかです。それを守らないのでブラックと言われ、場合によっては経営者の逮捕という事態に至るのです。

そこで、飲食店での労務管理の基本をしっかり理解し、働きやすい環境を作っていけるようにしましょう。

労務管理とは 

労務管理イメージ

「労務管理」という言葉は、定義的には幅広い範疇のことを示します。つまり、一言で言えば「労働者・人材の有効活用」が労務管理そのものです。

具体的には、求人、採用、教育、ポジション決め、人事考課、昇進、昇給、賃金や労働時間の管理等、退職、といった従業員の一連の「会社人生」に関わるすべてを適正に管理することです。

ただし法的に違反して問題になるもので最も多い内容は、この中で「賃金や労働時間の管理」です。ですので、この記事では主にその適正な基準と実施についてご紹介します。

飲食店の労務管理の基本 

飲食店の労働環境

飲食店で労務管理が適正に行われているかどうかの基準は、ズバリ「労働基準法」を順守しているかどうかです。労働基準法は、給料、労働時間、休憩時間や休日、有給休暇など、従業員が働く上での最低の環境や待遇の基準を定めた法律です。その最低ラインを守らなければ、適正な労務管理がなされていないということになるわけです。

その基本認識は以下の3つです。

1つめは労働基準法はすべての店舗または飲食企業を含めた事務所に適用される点です。「うちは個人店だから」という言い訳は成り立ちません。

2つめは店舗で雇っている「給料を受け取っている人」すべてに適用される点です。当然正社員のほか、アルバイト、パート、そして外国人労働者も国籍を問わず適用されます。仮にその外国人が就労ビザを持っていない不法就労者であっても、労働自体は違法ですが、その待遇と環境は労働基準法によって保護されているのです。

3つめは労働基準法は守るべき基準の提示のほか、違反した場合の罰則規定も設けてられている点です。違反すると、最悪、逮捕、罰金、懲役という刑事罰を与えられます。

これだけは知っておこう!飲食店の労務管理の6つの基本

飲食店ができる労務管理を説明する女性

ではその最低守るべき労働環境と待遇とはどのような内容でしょうか。具体的なポイントは以下の6つです。

1 【労働時間】1日8時間、週40時間または44時間が上限

従業員が給料の範囲内で働いていい時間数は、1日8時間以内、週40時間以内です。これを超えた場合は残業代を支給する必要があります。ただし、毎月シフトに入るような従業員が10人未満の飲食店は1週間につき44時間まで働くことができます。

しかし飲食店は平日と週末の忙しさの差が激しい業態です。その場合は「変形労働時間制」というものが適用できます。その内訳は「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1週間単位の非定型的変形労働時間制」の2つです。

1ヶ月単位の変形労働時間制

1か月間の中で日によって勤務時間の長短があっても、それを1週間に換算して週40時間、または44時間以内であればいいという制度です。ただし、これを実施する場合は労使協定または就業規則で明示しておく必要があります。

1週間単位の非定型的変形労働時間制

毎日の就業時間数の上限を10時間にして、その上で1週間の平均をとった時に40時間以下であればいいというものです。ただしこれを適用するためには、シフトに常に入る従業員が30人未満で、かつ労使協定を締結し所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

2 【休日】週1日以上

休日は1週間に少なくとも1日、または4週間の間で4日以上与えなければなりません。定休日がない場合も、シフト調整の中でそれを実施するのが義務です。

ただし「36(さぶろく)協定」が従業員との間で締結されていれば休日出勤は可能です。「36協定」とは、労働基準法の「36条」で決められていることから来ています。雇い主と従業員の間で時間外労働、休日労働協定を「36協定」として締結し、労働基準監督署長に届出れば、残業と休日出勤が可能になるのです。

ただしその場合でも、休日出勤を勤務時間に換算して、1ヶ月45時間以内、1年360時間以内までが限度です。

3 【休憩時間】1日1時間が決まり

勤務時間が6時間を超えた場合は45分以上、8時間を超えた場合は1時間以上の休憩時間を「勤務時間中」にとらせる必要があります。あくまで「勤務時間中」ですから、シフトインの前に1時間とらせたということは通じません。ただし休憩は一斉ではなく交代でOKです。

4 【有給休暇】パート、アルバイトでも必要

「年次有給休暇」は「有給」と略称されますが、6か月勤務を経過した後に与えられる10日間の休日のことです。その後1年半で11日、2年半で12日……というかたちで増えていきます。

この制度は正社員ではなく、パートやアルバイトの場合も適用されます。ただし就業日数によって与える有給日数は変わります。まず「週30時間以上または週5日以上勤務」の場合は正社員と同じ扱いです。これが「週30時間未満」になると、「週に4日、もしくは1年の勤務日数が169日~216日間である」場合は半年間につき7日間の有給、「週に3日、もしくは1年の勤務日数が121日~168日」の場合は5日間、「週に2日、1年の勤務日数が73日~120日」の場合は3日間、「週に1日以上、もしくは1年で働いた時間が48日~72日」であれば1日となり、全員に有給を与える必要があるのです。

しかし飲食店には繁忙期があります。その時に有給をとりたいという申し出があった場合、原則として経営者は断れません。しかし、経営者には「時季変更権」という権利があります。これは、「労働者が申請した日程で有給を与えると、業務上、正常な運営ができなくなる」という場合に、有給をとる時期を変更することができます。ただし乱用は不可で、シフト調整の努力をしっかりしても、やはり休まれると正常な運営ができなくなる場合に限った場合の権利です。

5 【残業代】支給は必須だが削減方法も

まず前提として、残業代は正社員だけではなく、パートもアルバイトも対象になります。

その上で、「時間外労働」とは、上で述べた1日8時間、1週40時間を超えて行われた残業のことをいいます。これに対し「法内残業」とは、労働基準法の範囲内で会社の決めた所定労働時間を超えた場合の残業のことをいいます。たとえば所定労働時間が38時間の場合、41時間働いたら時間外労働が1時間、法内残業が2時間になります。

実はこの区分は「残業代」を計算するうえで非常に重要です。なぜなら、

  • 時間外労働にの残業代:時間外労働の時間数(時間)× 1時間あたりの賃金(円)× 1.25
  • 法内残業の残業代:法内残業の時間数(時間)× 就業規則等で定める1時間あたりの単価(円)

となっているからです。ほとんどの飲食店の場合は、所定労働時間は40時間が実態ですから、上での1.25倍で払うことが大半でしょう。

悪用するとブラック企業になりますが、「残業代を基本給の中に含める」「残業代は、固定残業手当として決まった額を支払う」という方法もあります。これを「固定残業代」「固定残業手当」といいます。ただし、その場合、基本給の中で残業代に相当する金額と時間数がどれだけか、固定残業手当てが何時間分の残業に相当するのかを明確にし、それ以上の残業が発生した場合は、その分をやはり追加で支払う必要があります。

6 【雇用保険と社会保険】パートやアルバイトも加入させる義務がある場合も

正社員の場合は当然雇用保険、厚生年金、健康保険は加入させる必要がありますが、パートやアルバイトの場合もその義務が生じる場合があります。まずパートやアルバイトが正社員の3/4以上の時間数勤務していたら健康保険と厚生年金加入の義務が生じます。さらに31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上働いている場合は雇用保険に加入させなければなりません。

労務管理を正しく行うために飲食店としてできること

飲食店スタッフの労務管理のイメージ

このような労働基準法を順守し、正しく労務管理を行うために、飲食店はなにをしなければならないのでしょうか。

シフト管理の徹底にこだわる

法律を順守しながらコストを上げず、顧客満足度も下げないということは難問です。それを3つとも満たすにはシフト管理の徹底しか現段階ではないでしょう。

  • 日別、時間帯別の従業員人数と、それに対する人時売上を正確に把握し、適正レベルかどうか継続的にチェックする
  • 適正なシフトを作るために日別、曜日別の売上予測の精度を上げる
  • 各従業員のスキルレベルを正確に把握し、早番、遅番の中で従業員の組み合わせを工夫して最低限のシフトを組む
  • 従業員の接客スキル、調理スキルを上げて1人あたりの労働生産性を上げる

これらを行うことで、人件費コストの過剰なアップは避けることができるでしょう。

就業規則を整備する

個人店や小さな企業では就業規則がないところもありますが、実はそれは大きな問題です。就業規則は従業員の権利を守るだけではなく、労働争議や従業員の不正などがあった時に、店や会社を守ってくれる存在です。36協定も含めて、就業規則は必ず制定しましょう。

違反が見つかったらまず「是正勧告」

最近よくある例は、辞めた従業員などが労働基準監督署に法令違反の証拠を持って訴えるケースです。その時には労働基準監督署が事業所への立ち入り調査を行い、違反が認められてしまうと「是正勧告書」が交付されます。これは「勧告書」なので、罰則はありません。

しかし指定期日までに是正しない場合、あるいは「是正したふり」の書類で虚偽の報告をした場合、それが悪質と判断されると、最悪逮捕され刑事事件になります。そこでは経営者が「刑事事件の被告」として裁判にかけられ、有罪になると6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金になります。加えて、最近はこの「ブラック企業」に対する世間の目が非常に厳しいですから、マスコミなどでも取り上げられ、店としては大変な痛手になるでしょう。

まとめ

人事の意味

いかがでしょうか?

残念ながら、労働基準法を100%守っているという飲食店ばかりではないというのが現状でしょう。しかし、時代の流れとともにそのようなことはどんどん容認されなくなっています。飲食店経営者はそれを、食品衛生法などと同様に「絶対守るべき法律」だと理解して取り組むしかありません。それが店や企業をを守ることでもあります。労務についてしっかり理解して、体制を整えて安心できる店舗、企業を目指しましょう。

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