飲食店での労働基準法の休日、休憩時間について知っていますか?

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憂鬱な女性店員

飲食店経営者のみなさんは、従業員の休憩時間や休日をどのように決めていますか?またその休憩時間や休日には法律で決められた規定があることをご存知でしょうか?

2月は暇だから休んでいいけれど、ゴールデンウィークはぶっ続けで出てね、というようなことが実態としてはあるでしょうが、これは明確な法律違反です。そして、その違反に対しては最悪懲役、罰金という刑が待っています。ですので、飲食店経営者のみなさんは、この休日や休憩時間についての規定を理解して、しっかりと守っていく必要があります。

ここでは、それらを定めた基本の法律である「労働基準法」の解説と、飲食店の場合どのような規定があるのかについて、できるだけ簡単にご紹介します。

労働基準法とは?小さな店でも絶対に守るべき法律

時間に追われるビジネスマン

労働基準法は、給料、労働時間、休憩時間や休日、有給休暇などの従業員に働いてもらう為の最低基準を定めた法律です。それについて注意しなければならない点は3つあります。

1つはこの法律は、すべての店舗または飲食企業を含めた事務所に適用される点です。「うちは小さな個人で営業している店だから」ということは通じません。すべての店舗に適用されます。

2つめはその店舗で雇われ、給料を受け取っている人すべてに適用される点です。正社員だけではなく、アルバイトの学生や、パートのおばちゃんを含め、とにかく全員この法律にのっとって雇用し、処遇しなければなりません。外国人労働者も国籍を問わず適用されます。その外国人が就労ビザを持っていない不法就労者であっても適用されます。

3つめはこの法律には、単なる基準が設けられているだけではなく、違反した場合の罰則も設けてられている点です。違反した場合は、最悪、逮捕、罰金、懲役があり得ます。

つまり、甘く見ないでこの法律にのっとって店舗運営をしていくことが、経営者としては必須事項になります。

労働基準法で定める飲食店従業員の休日と休憩時間の規定は?

休憩する女性

労働基準法では、今問題になっている残業代を含む給料(賃金)などのことも規定されていますが、ここでは、その中の休日と休憩時間の規定に絞って説明します。

週40時間または44時間の労働時間が上限

まず、その前提として飲食店における1か月または1週間の労働時間がどう定められているかについて説明します。

簡単に書くと、その従業員個々につき1日8時間以内、週40時間以内が決まりです。これを超えた場合は残業代が発生します。ただし、レギュラーで働く従業員数が10人未満の飲食店は1週間につき44時間までOKになっています。

また飲食店の場合、平日は暇で週末が忙しく1日8時間を超えて働いてもらうことが多いのが実態です。そういう場合の特例として、「変形労働時間制」が認められています。その種類はいくつかありますが、飲食店が主に使うのは「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1週間単位の非定型的変形労働時間制」の2つです。ただし、注意しなければならないのは、後者を採用した場合は、1週間44時間までOKという特例は受けられません。

変形労働時間制とは

変形労働時間制のうち、「1ヶ月単位の変形労働時間制」というのは1か月間で曜日などによって勤務時間に長い短いがあっても、それを1週間に均して、40時間(または44時間)以内に入っていればOKという制度です。たとえばある従業員の1か月の各週の勤務時間が30時間、60時間、40時間、30時間だった場合、1週間にならすと40時間なので大丈夫、ということです。ただし、その際は労使協定または就業規則でそのことを定めておく必要があります。

さらに1か月ではなく、もっと繁忙日と閑散日の差が激しい店の場合は「1週間単位の非定型的変形労働時間制」ということもできます。これは、毎日の働く時間の上限を10時間として、その中で1週間を平均をとった時に40時間以下であればいい、ということです。ただしこの場合にも条件があり、レギュラーで働く従業員が30人未満、労使協定を締結し所轄の労働基準監督署に届出る、ということが必要です。

休日は週1日以上とらせないといけない

労働基準法では休日は1週間に少なくとも1日、または4週間の間で4日以上与えることが決まっています。定休日があればいいですが、ない店の場合はシフトで休むことになるので、就業規則にもそのことを書く必要があります。

ただし「36協定」があれば休日出勤は可能になります。36協定とは、労働基準法の「36条」で決められているもので、雇い主と従業員の間で時間外労働、休日労働協定を締結し(これを36協定といいます)、労働基準監督署長に届出れば、残業と休日出勤をさせられる、というものです。これがないまま残業をさせたり、週1日の休日を与えない場合は違反になります。ただし休日出勤をさせるにしてもそれを勤務時間に換算して、1ヶ月45時間以内、1年360時間に収めなければなりません。

休憩時間は1日1時間が決まり

労働基準法では、勤務時間が6時間を超えた場合は45分以上、8時間を超えた場合は1時間以上の休憩時間を勤務時間中にとらせることが決まっています。あくまで勤務時間中なので、シフトインの前に1時間とらせた、ということは通じません。念のためですが、普通の企業の場合は全員が一斉に休まなければなりませんが、飲食店は交代での休憩が認められています。

以上、基本中の基本の話だけですが、飲食店での勤務時間の上限の規定、休日と休憩時間の規定をお分かりいただけましたでしょうか。

飲食店で違反した場合の罰則は甘くみていると大変なことに

レッドカードを出すビジネスマン

このように、労働基準法では、かなり従業員の就業環境について厳格に決められているとことをまず理解しましょう。個人店や小さな飲食企業などの場合は、忙しさや人手不足、あるいは自分のところのような小さな店まで行政は見ていないだろうと高をくくって、規定を守っていないことも実際はありますが、それは後々大きなトラブルに発展する可能性があります。どのようなトラブルかをご紹介します。

違反が見つかったらまず「是正勧告」

労働基準法が飲食店で守られているかどうか、ということを監督するのが労働基準監督署です。もしも、店側、企業側と従業員の間でトラブルが起こった場合は、労働基準監督署が介入して話し合われることになります。また、最近よくあるのは上で書いたような規定を守っていないことが誰かに告発された場合、あるいは辞めた従業員が労働基準監督署に法令違反の証拠を持って駆け込んだ場合です。その時には労働基準監督署が事業所への立ち入り調査(臨検)を行い、その結果、違反が認められてしまうと「是正勧告書」が交付され、指定期日までに是正するよう勧告されます。

是正勧告を無視したらどうなるか

実は是正勧告そのものには法的な拘束力はありません。したがって「そんな法律を守っていたら人件費で店がつぶれる」などと考えて、従わなくてもそれが直接罰則ということにはなりません。しかし、適切な対応をしていない、あるいは「是正したふり」の書類だけを作って虚偽の報告をした場合、それが悪質と判断されると、最悪の場合には逮捕、送検(検察庁に書類が送られ刑事事件になる)の可能性があります。

そこで「刑事事件の犯人として」裁判にかけられ、有罪判決が出ると、この休日、労働時間、休憩時間の違反だった場合は、経営者に対して6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑が待っています。

まずは是正勧告を受けないことがいいわけですが、受けてしまったら甘くみないで、誠実に迅速に対応することが「刑事事件の犯人」にならないための鉄則です。

法律を守りながら、うまく店舗運営するコツ

うまく運営するチーム

ブラック企業から脱却する勇気と知恵を

とは言え、実際の飲食店を経営していると、ランチ営業が終わって休憩時間に夜の仕込みをしたり、深夜の営業が終わってから報告書を書いたり棚卸をしたり、ということがあって、規定を守ることが難しいのも事実です。また日別売上が見込みと違って、忙しいと思ってシフトを厚くしたら暇で、その分のしわ寄せで1週間の勤務時間が増えてしまった、などもあるでしょう。

それらのことはどの店でも多かれ少なかれ発声するので、「自分の店だけがちゃんとする必要はない」と思いがちですが、それが飲食業界全体が「ブラック」と言われている根幹の理由の1つなのです。

しかし今後の行政の方向も、また世論の方向もそれらのことについては一層厳しくなっていくのは火を見るよりも明らかです。つまり、飲食店経営者の方は、知恵を絞って法律をクリアしながらレーバーコストを上げず、かつ顧客満足度も上げる、ということを考える必要があります。そして何より必要なのは、たとえ一時的には利益が悪化しても、法律を守る方向に経営をシフトする勇気を持つことです。

以下ではその知恵の一端をご紹介します。

シフト管理の徹底にこだわる

とは言え、法律を守る、コストを上げない、顧客満足度を下げない、という三つ巴のパズルを解くカギはそれほど多くはありません。その最大のカギはシフト管理の徹底です。そのために必要なのは、以下のスキルです。

  • 日別の時間帯別、人時売上、労働時間を正確に把握する
  • 日別、曜日別の売上予測の精度を上げる
  • 早番、遅番をうまく使い、各従業員のスキルレベルを把握して適切なシフトを組む
  • 従業員の接客スキル、調理スキルを上げて人件費効率を上げる

以上をもう1度経営者自ら、あるいは店長と一緒になってしっかり取り組みましょう。

就業規則を整備する

また個人店、小さな企業では就業規則が整備されていないところも多いです。しかしこれが整備されていないということは、労働基準法を守る基準そのものがないということですから1番の問題です。

また、この記事では触れませんでしたが、労働争議や従業員の不正などがあった時に、店や会社を守ってくれるのもまた就業規則です。ですので、36協定も含めて、就業規則は必ず制定しましょう。

まとめ

疲れた女性

いかがでしょうか?

現状の飲食店の経営側にとっては労働基準法の規定はかなり厳しいものですが、「飲食店業なら長時間労働、サービス残業当たり前」とたかをくくっているとしたら、今すぐ改めましょう。それは是正勧告を受けること、刑事犯になること、などのリスクだけではなく、もしも仮に長時間労働によって従業員が過労死したと認定された場合、その店または企業は数千万単位の莫大な損害賠償リスクにさらされることさえあり得ます。

反対に、この法律を守ることで従業員のモラルも上がり、離職率が下がって教育研修費も含めた人件費が下がります。同時に従業員のスキルアップで顧客満足度も上がり、結果売り上げが伸びる、ということも十分に可能なのです。むしろ経営者が目指すべきはそちらでしょう。

ぜひ、できていない店、企業は今すぐ取り組んでいってください。