値付け方法は原価だけじゃない?お店もお客様も満足の値付け方法とは

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メニューに満足する女性

飲食店の経営者の皆さんはメニューの値付けはどういう根拠で決めていますか?単純に原価から割り出して決めている方が意外に多いのではないでしょうか。もちろんそれが基本ですが、お客様満足と増収増益を同時に実現するような戦略的な値付け方法もあるのです。

ここではそのようなメニューの値付け方法のノウハウをご紹介します。

飲食店による値付けとは

飲食店経営を始めるにあたりお店のコンセプトやお料理のメニュー構成、スタッフの指導、衛生など様々な点に気を配る必要があります。そのなかでもお料理の値付けは、どのお店も頭を悩ます要因のようです。新メニューを提供するときにも値付けしなければなりません。

できるだけいいものをたくさんの方に提供したいと思い、安く値付けすると食材原価以外に光熱費、家賃、人件費、郵送費などの出費があるので、赤字になることが予想されます。そうなれば経営は成り立たなくなり、お店をたたむ結果になりかねません。

またそれとは反対に高い値付けにしたせいで、顧客が遠のき経営不振につながることがあります。そのため原価はもちろんですが、料金の相場を考慮した上で値付けをする必要があります。適正に値付けをすることにより、お店にとってもお客様にとっても満足のいくものになるでしょう。

適正な値付けを行う理由

適正な値付けを行う必要がある理由をさらに考えていきましょう。

利益を上げられる

適正な値付けを行うことでお店の利益を把握でき、常にお店を健全な状態に保てるようになります。もし現状の値付けがあまり適していないならそれもすぐに改善を図れます。値付けの現状維持は難しいので定期的にチェックが必要です。そのためにも今の値付けがベストなのかを把握しておくことが大切と言えるでしょう。

原価率にとらわれない

飲食を提供する際にどうしても気になるのが原価率です。しかし提供するすべての食材が同じ原価とは限りません。原価率にばかり気をとられるなら納得のいく料理を提供することは難しく経営側も楽しく営業できないでしょう。そのため原価を把握することは大事ですが、客観性を持って値付けするようにしましょう。

心理的要素を考える

まず自分がこのお店に入ってメニュー料金を見たらどう思うかをシミュレーションしてみましょう。もし値段がばらけ過ぎているなら注文するのに時間がかかるだけでなく、いくらかかるのか頭の中で計算するのが難しくなり、それが不安要素となり注文自体を控えてしまうこともあります。逆に適正かつ分かりやすい値付けをしているなら安心して注文でき、食事中も楽しくできるでしょう。

原価から決める値付け方法

食材たち

まず、値付けのベースになる原価ですが、これは2種類あります。

【1】料理1品についての調理上の原価

まず原価と言えばこれがすぐに思いつくでしょう。1品の料理を調理するために必要な食材費のことです。1皿のカレーを作るうえで、米が150gで何円、ルーを作るのにカレー粉が何gで何円、肉が何円、といったものの合計金額です。ただし、厳密に一定比率で加えて計算している店もありますが、一般的には調理ロスや食材ロスは反映させません。これを「理論原価」と呼びます。

【2】棚卸をもとにした原価

一方で、実際の原価は日々変わることが多いものです。たとえば野菜は理論原価を決めた時の金額と、その日に仕入れた金額は違うことがほとんどです。そうなると、実際の原価は理論値とは異なってきます。このことから本来は、1皿単位でその仕入れ値などの変化を反映させた原価を算出しなければ本当の利益はわからないわけですが、それは非常に大変なので、通常は1ヶ月間の店トータルで食材費がいくらかかったか、という計算をします。

具体的には、

月初商品棚卸高 + その月の仕入高 - 月末商品棚卸高

という計算で出す原価です。これを「実棚原価」、あるいは「実原価」と呼びます。損益計算書上に記載される原価はこちらになります。

理論原価と実棚原価の差は?

この2つの方法で1か月の原価を計算すると、理論原価をもとにした場合は

1皿あたりの原価 × 注文皿数で計算できますし、実棚原価は上の式で計算できます。

しかし、その金額はほぼ確実に一致しません。

棚卸の数字が間違っていなければ、この一致しない金額が、食材ロス、調理ロス、廃棄ロス、注文ミスによるロスといった具合になるわけです。

一般的に値付けを原価をもとに行う計算としては、たとえば店の損益上、原価率を30%を目標としている場合原価 ÷ 30% = 提供価格になります。

実際には、ドリンク原価は15%、サラダは20%、肉料理は35%などのように料理のカテゴリーで目標原価率を変えていることが多いです。いずれにしても非常にシンプルで、なおかつこの決め方をしていれば絶対に原価割れをすることはありません。ロスの分はあるものの、ほぼ店の損益上の実際の原価率は目標原価率と近い数字になります。赤字にもならず、かつ悩まないで済む値付け方法です。

集客につながる値付け方法

集客メニュー

値付けもマーケティングの重要要素

値付け方法を原価のみに頼ることは、問題というよりももったいないのです。少し話がそれますが、マーケティングの話をします。マーケティングとは、Pドラッカーという社会学者であり経済学者によれば「売り込まなくても、顧客の方から買いに来てくれるようにする戦略」のことで、これを飲食店に置き換えれば「黙っていても集客できる戦略」のことです。

そしてそのマーケティングには4Pという要素があります。つまり、販売促進(Promotin)、店舗(Place)、料理(Product)、そして価格(Price)です。それぞれこの要素に関してしっかりと戦略を練れば、「黙っていても集客できる飲食店」になるということです。

そういう意味で、この4Pの中に「価格」があることからわかるように、値付けはしっかりと考えて行えば、集客につながる重要な要素なのです。つまり、「原価÷目標原価率」で一律に決めるべきものではないのです。

ではどのような観点で値付けを戦略的に行えば集客につながるのでしょうか。それには以下の4つの決め方があります。

1:集客商品としての値付け

その料理を食べるためにお客様が来るような値付け方法です。極論すれば、たとえば刺身の豪華舟盛で理論原価が1,000円のものを、500円で提供すれば評判になってたくさんの集客が得られます。それじゃあ赤字じゃないかと思われるでしょうが、後でまた詳しくご説明しますが、これで集客でき全員がこの舟盛を頼んだとしても、注文がそれだけで終わることは100%あり得ません。

当然ドリンクもほかの料理も頼みます。それらの合計で、理論原価率に近い原価率になればいいのです。そして集客できた分だけ、店としてはトータルで増益になるのです。

2:セット価格としての値付け

これはよくありますが、セット商品を作って単品の合計よりも安くする値付け方法です。生ビール500円に300円のおつまみを付けて、800円になるものを、「晩酌セット」といったように100円引きの700円で提供する値付けです。これは原価「率」としては上がります。しかし、仮にいつもは生ビールしか頼まないお客さんがいたとして、このセットが得なので注文してくれた場合、店に入る粗利「額」は増えます。

またこのメニューがあるために集客も増えます。つまり、「率」ではなく「額」を見て、利益額を増やすための戦略なのです。

3:見た目で大きく値引いた値付け

1番お客様に分かりやすいのは「値引き」です。ただし単純に値引くのでは原価率が上がるだけです。そこで、定価をあらかじめ値引くことを前提に高く設定しておくのです。たとえば、豪華海鮮冷やし中華を1,500円という定価にして、これを980円に値引いてPOPなどで大々的にPRして販売するのです。その時に980円の方を通常の目標原価率から計算した値付けにしておけば、お客様にはインパクトがありつつ、同時に利益もしっかり出る、という値付けになります。

ただし、この1,500円で販売したことが実際にないと「2重価格表示」として違法行為になります。そこで、冷やし中華のように、季節要因などで出数が期待できないメニューにこれを用いて、冬には定価の1,500円でメニューに載せて「販売実績」を作り、夏だけ「35%オフ!980円」として大々的に売り出すのです。

4:盛り放題を前提にした値付け

1の変形バージョンですが、最近たとえば「シラスパスタ」などで、お客様にはパスタだけが盛られた皿を提供し、スタッフがシラスのたっぷり入った容器を持ってテーブルに行って、お客様がOKというまで山盛りに盛る、ということをしている店があります。これでどれだけ盛っても価格は同じです。

これは、逆の意味で値引き販売となり、なおかつお客様にとってはお得感とイベント性と驚きがある値付け方法です。もちろん、この単品では赤字になる可能性もありますが、1と同様トータルで利益が出て、集客が増えれば店のトータルでは増益になる、という考え方です。

原則はお客様が満足し、できれば感動まで持って行ける値付け

以上の値付けはもちろん全メニューについて行うことではありません。店で数品、集客のための「キラー商品」としてラインナップするものです。そしてお気づきでしょうが、どの値付けも基本的にはお客様がその値付けで満足してくれる、という考え方でつけているものです。この値付け方法の原則はそこにあります。そしてさらに、その満足が感動まで行けば、間違いなく店はその値付け戦略によって繁盛店になるのです。

相場やターゲットから決める値付け方法

値付けには相場価格がある

例えばフレンチのお店でも、オフィス街にあるのか郊外や学生街、商店街にあるかなど場所によって値段設定に差が出てきます。これはその場の雰囲気やお店に求める存在意義が異なるため値段に差が出ます。

分かりやすくいうと、ターゲットになる客層やお店の雰囲気、広さ、立地などによって相場が異なるということです。

ターゲットになるお客様は主婦層やカップルが多く、安定した来店を認められそうなら値段を少し高めに設定する事で逆に高級感が増し、お客様のリピート率を上げることもできるでしょう。これらのお客様はただ単にフレンチを楽しむという目的だけではなく、お店の雰囲気や最高の接客を求めることも多いようです。それらに満足するなら少し高い値段設定でも何も不満は出ないでしょう。しかし、あまりにも現実離れした価格設定は顧客がつかなくなります。それは価格設定を安くしすぎると同じ結果になるので注意する必要があるでしょう。

ターゲット層を考えて値付けを設定する

商店街や学生が多いエリアでは値付け価格を低めに設定し、来客数を増やすことで利益を上げるようにしましょう。

もし高めの価格設定にすると学生にとってハードルが高くなり、敬遠されてしまいます。それよりも分かりやすい値段表示や安めの値段設定をするなら、自然と口コミで人気がり集客を上げられます。もし少しでも高めに値付けを行いたい場合は新メニューを提供し、その値付けを高めに設定するなら特別感が出るだけでなく、高めの値付けでも抵抗なくすんなり受け入れてもらえるでしょう。

もし子供連れをターゲットにする場合は、お子様メニューを数種類決めたり、安い、普通、高めの値段設定のメニューを数種類ずつ準備しておくなら、特別な日には高めのものを注文しようと思うので自然とそれらのメニューを選ぶようになるでしょう。また、数種類ずつ用意しておくことで選択する楽しみも増えてリピート率も高くなります。

原価のコストバランスのとり方

プレート

以上の説明を読んでも、実際に赤字になりそうで怖い、という経営者の方も多いでしょう。当然店としては利益が出なければなりませんから、上の戦略と並行して、値付けの調整というコストバランスを行い、全体での原価率を目標値以下に抑え込むことが、同時に非常に重要です。その方法には以下のようなものがあります。

・ポーションダウン

「キラー商品」以外でのメニューのポーションを見直しましょう。特にサラダなどのように1割グラム数を減らしてもお客様が気づかないようなメニューや、もともと大盛過ぎると思われるようなメニューをポーションダウンするのです。これによって、原価率は下がります。

・定番で安い商品の値上げ

よく出る定番のメニューで、かつもともと定価の低かったメニューの価格を上げましょう。たとえば380円のフライドポテトを390円にしてもお客様の不満にはなりませんし、たとえわずか10円の値上げでも数が出るメニューであれば、原価率のダウンはわずかですが、粗利「額」のアップが見込めます。

・ロスの削減

値付け戦略ではありませんが、あらゆるロスを減らすことも、トータルでの実棚原価の削減につながります。たとえば、調理ミスやオーダーミスをなくす、アルバイトなどに任せていたメニューがいつの間にかオーバーポーションになっていないか確認する、仕入れ数を見直し適正在庫にして廃棄ロスを減らす、同時に賞味期限の管理と先入先出の徹底も行うなどをするだけで、原価率が数%変わってきます。


これらを行えば、集客のための思い切った値付けを行っても、トータルで原価率が変わらない、あるいは下がりながら、集客数や店全体の売上も利益も上げることができるのです。これが戦略的な値付けです。

ただし、当たり前ですが、値付けだけですべてがうまくいくわけではありません。マーケティングの4Pで言えば、少なくともProductの料理の質の向上、Promotionの販売促進の実施は必須です。さらにその上位概念であるQSCもしっかりしていなければ、結局お客様は来店もリピートもしてくれません。戦略的な値付けも考えながら、ほかの点もおろそかにならないようにしましょう。

まとめ

料金イメージ

いかがでしょうか。

今まで、単純に原価から逆算して値付けをしていたとしたら、実はそれは大きなビジネスチャンスを逃していたということなのです。ぜひ上で挙げたような戦略を実行して、集客につながり、かつお客様も満足するような値付けをしてみてください。