飲食店では社会保険の加入は必要? 加入のメリットとは?

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社会保険

個人事業の方や社長1人の会社で、初めて従業員を採用する場合に「社会保険に入った方が良いですか?」と質問されることがあります。

社会保険に入ると、保険料の半分を負担しなければいけないことから、社会保険加入へいい印象を持っていない経営者様も多いのではないでしょうか? しかし、例えば「事業を拡大したい」「今後店舗展開をしていきたい」という場合は社会保険に入ることが必要になり、加入することで給付金や減税制度のメリットを受けることもできます。今回は、飲食店が社会保険に入るメリットと、各保険について説明をします。

社会保険制度についてしっかり理解しよう!

ひとくくりに社会保険と呼ばれていますが、具体的にはどの保険を指すのかしっかり理解できていますか? 社会保険にはいくつか種類がありますが、一般的には健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険のことを指します。それぞれの制度の概要は以下の通りです。

健康保険

仕事中以外で病気やケガをした時に給付が受けられます。皆さんが病院で診察を受けるときは医療費のうち2割から3割を負担することになります。通常は、自営業者だと市町村が運営している国民健康保険に、サラリーマンの場合は健康保険組合(協会けんぽ など)が運営する健康保険に加入することになります。

厚生年金

会社で働いている、いわゆるサラリーマンが加入する年金です。自営業者が加入する国民年金よりも多い金額の年金を貰うことが出来ます。

介護保険

40歳から加入する事になっていて、健康保険料と一緒に徴収されます。介護が必要になったときに介護サービスを受けることが出来ます。

雇用保険

求職者給付(失業した時の手当など)や教育訓練給付(資格取得の補助など)が受けられます。労働者が対象なので事業主や社長、社長の家族は加入出来ないことになっています。

労災保険

仕事中に事故で怪我をした場合などに診察費の自己負担なしで診察を受けられます。雇用保険と同様に労働者が対象になります。

社会保険の加入方法

健康保険・厚生年金・介護保険(40歳以上から)は社長1人の会社でも加入が義務付けられています。また、雇用保険と労災保険は従業員を1人でも雇った場合には加入しないといけないことになっています。なお、個人事業の場合は従業員が5人以上いる場合は加入義務があります。

社会保険の加入手続きにはそれぞれ以下の書類を提出します。

項目 番号 提出書類 提出先 提出時期
健康保険・厚生年金 1 新規適用届 年金事務所 加入する日から5日以内
2 資格取得届 年金事務所 従業員入社から5日以内
労働保険 3 保険関係成立届 労働基準監督署 労働保険に入る日から10日以内
4 概算保険料申告書 労働基準監督署、金融機関など 労働保険に入る日から50日以内
5 雇用保険適用事業書設置書 公共職業安定所(ハローワーク) 事業所設置から10日以内
6 雇用保険被保険者資格取得届 公共職業安定所(ハローワーク) 従業員が入社した月の翌月10日まで
※健康保険は協会けんぽに入る前提としている。

1. 新規適用届

健康保険・厚生年金に加入する場合に最初に提出する書類です。自分のお店が今後社会保険に加入する(社会保険加入の事業所になる。)ことを届け出るものになります。

2. 資格取得届

社会保険に加入する人別に提出する書類です。加入者の基礎年金番号や住所、給料の金額を書いて提出します。

3. 保険関係成立届

労働保険に加入する事業所になったことを届け出る書類です。労働保険の手続きで一番最初に行います。

4. 概算保険料申告書

労働保険に加入した時は保険料を前払いすることになります。この書類を提出して保険料を計算して納付します。

5. 雇用保険適用事業所設置届

保険関係成立届(上記表3)の手続きの後に、公共職業安定所(ハローワーク)にも届出が必要になります。

6. 雇用保険被保険者資格取得届

雇用保険に入る人別に提出する書類です。この書類も保険関係成立届(上記表3)の手続き後に提出します。

社会保険に加入するメリットは人材の確保!

どんな業種にも共通して言えることですが、経営者がずっと現場に居続けると企業として大きく成長は出来ません。どうしても、経営者自身がやれる範囲の中で収まってしまうことが多いからです。従業員を雇って徐々に現場の仕事を任せつつ、経営者は人材育成や経営方針を考えることに業務をシフトしていくことが、事業の拡大につながっていくと思います。人材の確保の必要性と社会保険のつながりについて説明します。

少人数だと限界がある

自分とアルバイトやパートのみの少人数でお店を回している場合、対応出来るお客様の数に限界があるかと思います。お客様が増えてきたときに従業員の確保が出来ていなければ、お客様を長く待たせてしまうことや大人数の予約を受けられないといったこともあります。また営業時間や営業日数を増やすことも難しくなり、結果として売上増加のチャンスを逃してしまうかもしれません。

優秀な人材の確保や人の定着につながる

人手が足りないから求人を考えたとします。求人広告を出したとしても社会保険完備と社会保険加入無しでは応募者数にかなりの違いがあります。働く側からすれば社会保険加入できる所で働きたいから、当然社会保険完備のお店を選ぶはずです。応募者が多ければ優秀な人材を確保できる可能性も高くなります。

また、せっかく採用してもすぐに退職されてしまうと再度求人をしなければいけないので、余分なコストがかかります。新人を教育して仕事が出来るようになっても、その人が退職してしまったら、また一から新人を教育するという悪循環になることも考えられます。人の定着もお店の発展に重要と言えるかもしれません。社会保険に加入して従業員の福利厚生を充実させることが人の定着にもつながると思います。

事業を拡大するためには店舗を増やす必要が出てくる

飲食店のビジネスモデルを考えると、お店のスペースや客単価の関係で、1店舗での売上には上限があります。売上が順調に伸びてきた場合は新店舗を増やすことを考えますが、店舗を増やすためには自分以外の管理者(店長)が必要になります。そうなると、アルバイトやパートのみでの営業は難しいので正社員を採用する必要があります。最近だと正社員なのに社会保険未加入という事を聞いたりもしますが、お店や経営者の社会的信用を考えると社会保険の加入は必須だと考えます。

人材確保以外にもメリットがある!

個人事業で売上が増えてきて納税額も大きくなってくると、節税がしやすいことから会社を作るように提案をすることもあります。ただ、従業員を社会保険に入れなければいけなくなり、固定費は必ず増加してしまいます。固定費の増加を懸念して会社を作らない経営者の方もいますが、社会保険に加入するメリットは事業主にもあります。

健康保険

①健康保険料が安くなることが多い

個人事業の場合は住所がある市町村が運営する国民健康保険に加入する事になります。一般的にこの国民健康保険は保険料が高く設定されていて、同じくらいの収入でも健康保険に加入した方が保険料負担は下がることが多いかと思います。

②傷病手当金がある

病気やケガで4日以上会社を休んだことにより、休んだ間の給料が貰えない(又は減額された)場合に支給されます。貰える手当金の金額は給料の2/3を日割り計算した金額になります。この手当金は国民健康保険では支給をしていない市町村がほとんどの様です。

③出産手当金がある

出産の前後に会社を休んで給与の支払がなかった期間について手当金を受けることが出来ます。手当金の金額は上記の②と同様に給料の2/3となります。この手当金も国民健康保険では支給していない所がほとんどの様です。

④家族分の保険料負担が減る

国民健康保険だと家族(配偶者や子供)が多ければ保険料の負担も増えてしまいますが、組合の健康保険だと年収130万円未満の家族は保険料の負担が無くなります。

厚生年金

①配偶者の保険料負担が無くなることがある

夫婦で個人事業主として事業をしている場合は、夫婦ともに国民年金保険料を払うことになります。しかし、厚生年金の場合は、例えば夫がサラリーマンで妻が専業主婦だと妻は国民年金保険料を払わなくてもいいことになっています。また、妻の方は保険料を払っていなくても国民年金を貰うことが出来ます。

②年金額が増える

国民年金は40年間満期で保険料を払っても、貰える年金は年間約78万円なので老後の生活資金としてはかなり少ない金額かと思います。 厚生年金は国民年金に上乗せして支給されるので、必然的に国民年金より金額は多くなります。サラリーマン時代に払った保険料が多ければ、厚生年金の金額も多くなります。

労働保険(雇用保険・労災保険)

①減税制度がある

労働保険に加入していることで受けられる減税制度もあります。

雇用促進税制

従業員を新しく雇った場合に受けられる減税制度です。去年と比較して従業員が2人(事業規模が大きい場合は5人)以上増えると、減税メリットを受けられる可能性があります。

  • 減税金額・・・・ 「増えた従業員の数」×40万円(上限あり)

所得拡大税制

従業員に払った給料が前年よりも多い場合に受けられる減税制度です。

  • 減税金額・・・・ 「増えた給料の金額」×10%(上限あり)

②助成金制度がある

労働保険に加入していることによって受けられる助成金も多数あります。その一部をご紹介します。

  • 雇用調整助成金・・・従業員の雇用維持を図るための助成金
  • 特定求職者雇用開発助成金・・・高齢者や母子家庭の母等を雇った時
  • 生涯現役企業支援助成金・・・40歳以上の方が起業して、中高年齢者を雇った時
  • キャリアアップ助成金・・・派遣労働者やパートを正社員にした場合等

まとめ

社会保険に加入する最大のメリットは何といっても人材の確保です。これから事業拡大や多店舗展開を考える方は人手を増やす必要がありますが、大前提として社会保険への加入は必須になります。固定費の増加になりますが今回ご紹介したようなメリットもたくさんあります。

是非、今後の経営の参考にして頂き事業拡大を目指してください!