法人化をしてお金を貯めよう! 〜かしこい節税・貯蓄の方法〜

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お金の上にある人形

事業をしていると一度は耳にしたことがある法人化。飲食店経営では個人事業の方が多く、法人化を検討される機会も多いのではないでしょうか?個人事業も法人化もそれぞれの良さがありますが、今回は法人化による節税を活用した貯蓄効果についてご紹介します。

所得税等と法人税等の税率の差を使って法人に貯金する

飲食業で法人の場合は資本金300万の中小企業を前提とした概算の税率比較

所得税等
課税される所得金額 所得税 住民税 事業税
税率 控除額 税率 税率
195万以下 5% - 10% 5%
195万超 330万以下 10% 9.75万
330万超 695万以下 20% 42.75万
695万超 900万以下 23% 63.6万
900万超 1800万以下 33% 153.6万
1800万超 4000万以下 40% 279.6万
4000万超 45% 479.6万
法人税等
課税される所得金額 法人税 法人税等表面税率
税率
400万以下 15% 22.46%
400万超 800万以下 24.90%
800万超 23.40% 37.04%
※上記税率はH28.4月~H29.3月の法人化を前提としています

所得税は所得に応じて税率が5%~45%までの7段階ありますが、法人税は15%と23.4%の2段階のみです。税率表を比較して見てみると、事業を始めたばかりで所得(売上から経費を引いた利益)が少ない時期は所得税の税率は低くてまだそんなに負担感がありませんが、事業が軌道に乗って所得が増え続けると、その増えた所得に対する所得税の税率が法人税の税率を超えるのが分かります。

実際事業にかかる税金はこのほかに住民税・事業税もあります。これらを含めて簡単に個人事業主と法人の税額を比較してみましょう。

所得1,000万の場合

【個人事業主】 1,000万 × 48% - 153.6万 = 326.4万

【法人】 400万 × 22.46% + 400万 × 24.9% + 200万 × 37.04% = 263.52万

【個人事業主 > 法人】 差額62.88万

個人事業主は900万を超過した100万については48%(33+10+5%)の税負担、法人は800万を超過した200万については37.04%の税負担、超過分の税率差は10.96%です。そのような税率差により、同じ1,000万の所得であっても法人の方が62.88万多く手元に残ることになります。そして、所得が4,000万に達すると、この税率差は22.96%にも及び、仮に所得が4,500万と仮定すると法人の方が660.48万多く手元に残ります。

給与所得控除を使った節税

個人事業の場合、売上から経費を引いた所得に所得税等が課税されますが、このとき自分の給与は経費になりません。所得税等を引いた手残り資金が生活資金や貯金にまわることになります。
法人の場合、経営者の給与を経費に含めて計算した所得に法人税等が課税されますが、一方でこの給与は所得税等の対象になります。ただし、この給与に直接所得税等が課税されるのではなく、給与所得控除という概算経費を引いた後の給与所得で所得税を計算します。つまり、この給与所得控除分だけ、法人税と所得税で2重に経費扱いされるのです。
加えて、給与所得については個人事業税が課税されないのも重要なポイントです。

給与を1,000万とした場合の比較

図で実際の流れを見てみましょう。どちらのケースも前提は【売上-経費】が1000万で、これが自分の給与設定額とします。個人事業の場合は、青色申告特別控除という実際はお金がかからない計算上の経費を控除したものが事業所得となり、所得税等が課税されます。法人化の場合は、経営者の給与を経費に含めるので所得は0となり法人税はかかりませんが、この給与のうち給与所得控除を控除した金額が給与所得となり、所得税等が課税されます。
所得税は所得に応じて税率が7段階に分かれています。給与所得控除220万と青色申告特別控除65万の差額155万により課税所得が下がるので、所得税率は33%→23%となります。結果、同じ業績であっても個人事業より法人化をして給与で収入を得た方が、所得税・住民税の節税効果で54万多く手元に残ることになります。さらに事業税の課税がない分を加味すると合計89万となり、節税効果は一層高まります。

法人を使って事業資金や引退後の資金を蓄える

個人事業主と法人では税法上取り扱いが違うものがいくつかあります。

所得税と法人税の違い
個人事業主 法人
退職金 経費にならない 経費
退職所得として分離課税
生命保険料 所得控除 経費
最大12万限度 保険料の1/2〜全額
親族への給与 青色事業専従者給与 役員・従業員給与
所得控除の適用不可 所得控除の適用可
欠損金の繰越期間 3年 9年
減価償却 強制 任意

退職所得の計算

(退職金 - 退職所得控除<20万 × 勤続年数>) × 1/2 = 退職所得

退職所得 × 所得税率

※ 他の所得と合算しないで適用税率を判定
  1. 退職金

    個人事業では退職金という概念がありません。事業で得た利益に所得税等が課税され、所得税等を引いた手残り資金の中から引退後の生活資金を捻出することになります。一方、法人では引退時に退職金を支給することが可能です。退職金は法人では経費となり、支給を受けた個人では退職所得として所得税等が課税されます。そしてこの退職所得の計算方法は、累進税率が高くならないよう非常に優遇されています。

    退職金を支給したことで法人の業績が赤字になった場合には、その欠損金は9年間繰り越すことが可能です。翌期以降の利益と相殺されるので、累計で黒字になるまで節税効果は最大9年間続きます。

  2. 生命保険

    経営者は万が一に備えて、勤務の方と比べて多額の生命保険に加入する傾向にあります。この生命保険の保険料ですが、個人事業の場合は事業所得の経費にはなりません。勤務の方と同様の所得控除しか認められていません。一方、法人の場合は、経営者だけでなく従業員の生命保険料も経費となります。保険料のうち経費になる金額は保険の種類と契約内容によりますが、個人事業主より優遇されています。法人税の節税効果を利用することで、個人事業主より少ない資金で事業保障と退職資金の積立を兼ねた生命保険を加入することも可能となります。

  3. 所得の分散効果

    個人事業では親族の給与は青色事業専従者であれば事業所得の経費になりますが、青色事業専従者になると配偶者控除や扶養控除は適用できなくなります。また、6か月以上事業に専ら従事していることが要件となるので、他の勤務との兼業は認められない可能性があります。
    一方法人では、従業員の場合は勤務実態に即した給与であり、役員の場合は定期同額(1年間月額が固定)の給与であれば経費となります。年間103万の給与であれば配偶者控除や扶養控除も適用されますし、兼業の制限もありません。例えば、他店で修業している子供であっても、後継者として経営に参画させるため役員とし、役員報酬を支給することも可能です。人手が足りない時に臨時アルバイトとして従業員給与を支給することもできます。所得税は7段階の累進課税で最大45%の税率です。経営者一人に多額の役員報酬を支給するより、家族で分散して給与を支給した方が、同じ世帯収入であっても所得税が少なくなります。

  4. 個人と法人の分散効果(法人で資金を蓄える)

    個人事業の場合は、事業で得た利益は全て事業所得として課税され、税引き後の利益も全て個人事業主の貯蓄となります。一方、法人の場合は、給与設定をした金額だけが個人事業主の給与所得として課税され、法人に利益が出た場合は法人税等が課税され、税引き後の利益は法人の貯蓄となります。この構造に着目し、生活資金として必要な金額で給与設定して、残りの利益を法人に残した場合の貯蓄効果を見てみましょう。

    業績・生活資金を同額とした場合の比較

    【売上-経費】を1000万とし、どちらも生活資金を400万で設定します。個人事業の場合の税額は上記2と同様です。法人化の場合は、法人と個人に所得が分散されるため法人税等・所得税ともに税率が低くなり、かつ給与所得控除と事業税の効果もあって、法人税等と所得税等の合計は個人事業と比べ109万少なくなります。結果、法人と個人の資金合計も109万多くなり、法人を利用することで貯蓄効果が高くなることが分かります。「給与を1000万とした場合の比較」のケースでの法人化と比べても、109万と89万の差額で20万貯蓄効果は高くなります。法人で蓄えた資金は、事業資金や退職資金として利用することもできますし、活用方法は多岐にわたります。

法人化を検討する

法人化には設立費用もかかりますが、事業規模が一定以上になると、これまで紹介した仕組みを活用することでコスト以上の貯蓄効果がある他、資金調達面や福利厚生面でも選択肢の幅が広がります。事業が拡大してきたら一度法人化を検討してみてはいかがでしょうか?目安としては、【売上-経費】の業績が900万を超えたあたりが法人化を検討するタイミングでしょう。

なお、文中の表や計算例は、説明の便宜上、均等割・復興税や地方税の課税所得の計算については省略しております。仕組みの理解や法人化を検討するための概算としてご参考ください。