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小規模な飲食店では、現金出納帳を作っていないお店もあるようです。 現金出納帳は、少なくとも商売では最も基本的な帳簿です。これさえあれば確定申告のための計算ができますから、現金出納帳は毎日記帳すべき重要な帳簿となります。
今回はこの現金出納帳にスポットをあてていきます。
現金出納帳とは

現金出納帳は、家計簿のようなものです。現金の入金、出金を時系列に(発生順に)記録するための会計帳簿のことを指し、現金がどこから入って、どのように使われたかがすぐに分かるようになっています。一般的に飲食店は現金商売ですから、この現金出納帳がよく使われます。一般の企業では現金取引が少ないため、仕訳により、総勘定元帳作成という手順となります。
現金出納帳は収入と支出、金額、科目、摘要欄、日付の欄があり、日々の取引の1つ1つをそのまま記帳します。簿記の知識は必要ありません。ちなみに青色申告をするようになると、仕訳という作業が発生し、簿記の3級くらいの知識が必要となってきます。ただし最近では、使い易い会計ソフトがたくさん販売されていますので、この会計ソフトで簿記の知識がなくても入力、記帳ができるようになりました。
飲食店で現金出納帳が重要なわけ

飲食店は、一般的に現金商売が基本となり、収入も支出も現金のことが多い業種です。この特性があるため税務署での対応が他の事業所と異なります。
また、個人商店で規模が小さくても、税務調査が入る場合があります。この時税務署は、その飲食店に対して事前の調査通知を行いません。通常は1週間前ぐらいに連絡が入り突然やってきます。そして会計帳簿類や、領収書や個人の預金通帳など丸ごと提出を要求されます。
なぜ、連絡なしで突然やってくるかというと、現金商売であるがゆえに売上が任意に抜かれたり、現金が個人的に使われたり、取引の実態に誤魔化しが起こりやすく、不正が起こる前に現場に直接入って調査をするためです。調査は、お店だけでなく店主の自宅や取引先、取引銀行などにも一斉に入ります。 この税務調査の際、現金出納帳が役に立ちます。現金出納帳が、取引の事実関係を証明し、重要な証拠書類となります。
もしこういった書類がなければ、そのお店の税額の決定ができません。そうした場合は、税務署は推計課税という形をとります。同じ職種、規模が同じような別な飲食店の納付額を参考にして税額を確定します。これに反論できる術がありません。 このように現金出納帳は、重要な帳簿ということがお分かりいただいたと思います。
現金出納帳の書き方とは

現金出納帳は、通常左から、日付、科目、摘要、収入額、支払額、差引残高の欄が並んでいます。科目は科目欄に記入、摘要はその科目の詳細、相手先、購入先、買ったもの、使ったものなど詳しく書きます。
ちなみに、科目に事業主貸という名称がありますが、これはお店のお金で事業主が個人的な費用として使った場合のための科目です。事業主借は、事業主がお店にお金を返したら入金欄に記入します。
よく現金出納帳に使われるものを紹介しておきます。
収入額:お店の1日の売上の合計 ―― 科目は「売上」
支払額:お店の材料・食材の仕入れ ―― 科目は「仕入」
- お店の従業員(アルバイト)の給料 ―― 科目は「給与」
- 市場に仕入れに行った交通費 ―― 科目は「旅費交通費」
- お店の広告を出した ―― 科目は「広告宣伝費」
- 料理人の先輩に贈り物 ―― 科目は「交際接待費」
- お店の電気代 ――科目は「水道光熱費」
- お店の水道代 ―― 科目は「水道光熱費」
- お店の制服、作業服 ―― 科目は「福利厚生費」
- お店の火災保険料を払った ―― 科目は「保険料」
- お店の電話料、携帯料 ―― 科目は「通信費」
- 税金 ―― 科目は「租税公課」
- お店で使った細かい消耗品 ―― 科目は「消耗品費」
- その他、新聞代、雑誌代など ―― 科目は「雑費」
現金出納帳の書き方をケースごとに解説

次に現金出納帳の書き方を事例を挙げながら説明していきます。
上記で説明しましたように、上段に日付、科目、摘要、収入金額、支払金額、差引残高の各項目が並んでいます。銀行の預金通帳や家計簿、小遣い帳などとほとんど同じとなり難しくはありません。注ポイントは、1つの取引で必ず1行とすること、科目は事務作業をする場所のどこかに科目表を張っておくと進めやすいです。
基本的な部分ですが、現金出納帳は「誰が見ても分かるように」というのが絶対条件となっています。摘要欄は、後で税務署から指摘を受けた時スムーズに答えられるように、なるべく詳しく記入しておきましょう。
簿記に詳しい方でないと、見てもサッパリ何のことか分からないという書き方はNGです。例えば…
5/1 ●●にいくためにタクシー代金2000円を現金で支払う
(借方)旅費交通費2000 (貸方)現金2000
5/11 預金口座から20万円引き出した
(借方)現金20万円 (貸方)預金20万円
5/21 業務用の機材を5万円で購入して現金で支払う
(借方)消耗品 5万円 (貸方)現金5万円
実際に現金出納帳に転記すると…
日付 |
勘定科目 |
摘要 |
収入金額 |
支払金額 |
差引残高 |
前月繰越 |
100000 |
||||
5月1日 |
旅費交通費 |
タクシー代 |
2000 |
98000 |
|
5月11日 |
普通預金 |
現金引き出し |
200000 |
298000 |
|
5月21日 |
消耗品 |
事業用機材 |
50000 |
248000 |
となります。
まとめ

いかがでしょうか。
今回は飲食店では欠かせない、現金出納帳についてお伝えしました。
飲食店では現金出納帳が使用されているお店が多く見られます。会計では最も原始的な方法ですが、簡単で分かり易く、確定申告の計算も簡単ですので、しっかり記帳していってください。