キャリアアップ助成金が飲食店におすすめな理由とは?

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助成金関連の書類とコイン

パートやアルバイト、契約社員といった非正規社員を採用した場合、一定の要件を満たすと助成金が支給される制度があります。ところが、事業主の中には助成金のことを知らない、あるいは知っていてもどのような手続きが必要なのかがわからないために、制度の恩恵を受けないまま過ごしている方が少なくありません。

そこで今回は、数ある助成金制度の中でも、飲食店で最も多く活用されている「キャリアアップ助成金」について、支給条件や申請のしかたについてご紹介いたします。

キャリアアップ助成金とは

履歴書の記入

キャリアアップ助成金とは、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員など雇用期間が定められている有期契約労働者(非正規社員)がキャリアアップするための取り組みを会社として実施した事業主に対して助成する制度です。

キャリアアップ助成金制度は、2018年4月の改定で次の7つのコースに分けられました。なお、支給される金額は事業所の規模や生産性向上の割合によって異なってきますが、ここでは中小企業(資本金額または出資金額が5,000万円以下、常時雇用労働者数50人以下)の飲食店を例に、基本的な額を表示しています。

1.正社員化コース

非正規社員から正規社員に転換または直接雇用した場合

(1) 有期雇用契約から正規雇用契約(正規社員)に転換した……1人当たり570,000円

(2) 有期雇用契約から無期雇用(非正規社員)に転換した……1人当たり285,000円

(3) 無期雇用契約から正規雇用契約に転換した……1人当たり285,000円

さらに、次のようなケースに該当する場合は、それぞれ一定額が加算されます。

  • 上の(1)か(3)のケースで、非正規社員を正規社員として直接雇用した場合は、さらに1人当たり285,000円が加算されます。
  • 母子家庭・父子家庭の親を転換したとき、(1)の場合は1人当たり95,000円、(2)か(3)の場合は1人当たり47,500円が加算されます。
  • 「若者雇用促進法」に基づく認定事業主が35歳未満の労働者を転換したとき、(1)の場合は95,000円、(2)か(3)の場合は47,500円加算されます。

※申請の上限人数は、(1)~(3)を合わせて20人までとされています。

2.賃金規定等改定コース

すべての有期契約労働者の賃金規定を2%以上増額した場合

  • 対象労働者が1人~3人……1事業所当たり95,000円
  • 対象労働者が4人~6人……1事業所当たり190,000円
  • 対象労働者が7人~⒑人……1事業所当たり285,000円
  • 対象労働者が11人から100人……1人当たり28,500円

※申請の上限人数は100人まで、申請回数は1年度に1回のみとされています。

3.健康診断制度コース

有期契約労働者を対象に「法定外の健康診断制度」を設け、延べ4人以上の健康診断を実施した場合

  • 1事業所当たり380,000円

※申請回数は1回のみです。

4.賃金規定等共通化コース

有期契約労働者に対し、正規社員と共通の職務に応じた賃金規定を作成し、適用した場合

  • 1事業所当たり570,000円
  • 共通化した対象者(2人目以降)について、1人当たり20,000円を加算

※新しく設けられたコースで、申請人数の上限は20人まで、申請回数は1回のみです。

5. 諸手当制度共通化コース

有期契約労働者に対し、正規社員と共通の諸手当(皆勤手当、家族手当、住宅手当など)に関する制度を設けて適用した場合

  • 1事業者当たり380,000円
  • 共通化した対象労働者(2人目以降)について、1人当たり15,000円を加算

※これも新規のコースです。適用する手当は、対象労働者が最も多い手当の1つのみとされています。

6.選択的適用拡大導入時処遇改善コース

社会保険に加入するために有期契約労働者の基本給を増額した場合、増額の割合に応じて次のように定められています。

  • 3%以上5%未満……1人当たり19,000円
  • 5%以上7%未満……1人当たり38,000円
  • 7%以上10%未満……1人当たり47,500円
  • 10%以上14%未満……1人当たり76,000円
  • 14%以上………………1人当たり95,000円

※申請人数は上限30人まで、申請回数は1回のみです。

7.短時間労働者労働時間延長コース

短時間労働者の週の所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険に適用した場合

  • 1人当たり190,000円

※申請人数は上限15人までとされています。

キャリアアップ助成金が飲食店におすすめな理由

笑顔のカフェ店員

キャリアアップ助成金は、雇用の増加・安定を目的に努力した事業主に交付される報奨金のようなもののため、返済の必要がない点が大きなメリットです。似たような制度に補助金がありますが、これは事業そのものの拡大を支援することを目的としているので、申請をしても会計検査院の審査に通らなければ受けることができません。それに対し、助成金は要件を満たしていれば原則としてだれでも受けることができます。

助成金はその性質上、労働環境を整備し、受給に値する結果が出てから申請するものですから、実際に受給できるまでには時間がかかります。したがって、開業資金や初期投資に助成金をあてるということはできません。しかし、パートやアルバイト従業員を正規社員に転換したり賃金を増額したりすることによって、社員のモチベーションや帰属意識が高まり、経営の安定に貢献するようになります。人材不足に悩まされる飲食業界だからこそ、優秀な従業員の確保・定着のためにキャリアアップ助成金を有効に活用したいものです。

キャリアアップ助成金を受給する条件

書類のチェック

キャリアアップ助成金を申請するには、事業主側と労働者側の双方の条件を満たす必要があります。

事業主の条件

(1)~(5)まですべてに該当する事業主であること

(1) 雇用保険の適用事業所の事業主であること

(2) 事業所ごとにキャリアアップ管理者(キャリアアップの取り組みの責任者。事業主でも可)を置いていること

(3) 対象労働者についてキャリアアップ計画(後述)を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けていること

(4) 該当するコースの対象労働者について、賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備していること

(5) キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んでいること

キャリアアップ計画とは、コースと取り組み期間を定め、対象労働者、目標、目標達成のために講じる措置などを大まかに記載するものです。ガイドラインに沿って作成すればよく、随時変更することもできます。

労働者の条件

(1)~(9)まですべてに該当する労働者であること

 (1) 次のいずれかに該当すること

  • 事業主に雇用される期間が通算して6か月以上ある有期契約労働者
  • 事業主に雇用される期間が6か月以上の無期雇用労働者
  • 6か月以上の期間、継続して派遣先の同一の業務に従事している派遣労働者
  • 事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、修了した有期契約労働者

(2) 正規雇用契約者として雇用する約束のもとに雇い入れられた有期契約労働者ではないこと

(3) 次のいずれかに該当する者ではないこと

  • 有期雇用契約から正規雇用契約に転換される場合、その事業所または密接な関係にある事業所に過去3年以内に正規社員として雇われたことがある者
  • 無期雇用契約に転換される場合、過去3年以内に、その事業所または密接な関係にある事業所に正規雇用、または無期雇用労働者として雇用されたことがある者

(4) 事業主または取締役の3親等以内の親族ではないこと

(5) 短時間正社員に転換した場合、転換後の所定労働時間・日数を超えた勤務をしていない者であること

(6) 障害者を支援するための法律に規定される就労継続支援A型の事業所を利用していない者であること

(7) 支給申請日において、離職していないこと(天災などやむを得ない事情のために離職した場合や、正当な事由で解雇された場合は除く)

(8) 雇用形態に定年制が適用される場合、転換から定年の年齢に達する日までの期間が1年以上ある者

(9) 事業主または密接な関係にある事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと

キャリアアップ助成金の申請方法

助成金申請書類の記入

申請条件を満たし、大まかなキャリアアップ計画もできたら、管轄の労働局に必要書類を提出して、労働局長の認定を受けることになります。必要書類については労働局に問い合わせてください。書類の提出は、ハローワーク経由で行うことも可能です。

大事なのは申請期間を厳守することです。申請期間は「転換または直接雇用した労働者に対し、賃金を6か月分支給した日の翌日から起算して2か月以内」と定められています。

【例】賃金の締め切り日が20日で25日支払いの場合、4月1日を転換日とすると、4月分~9月分までの6か月分の賃金を支給した翌日、つまり、9月26日から11月25日までの2か月間が「支給申請期間」となります。この期限を過ぎてしまうと受給できなくなりますから、注意が必要です。

まとめ

笑顔のキャリアウーマン

いかがでしょうか?

キャリアアップ助成金の申請条件は、一見すると難しそうに思われるかもしれません。しかし、助成金を受けられるということは、労働環境を整備した事業所であることを国から認められたことの証しとなります。また、キャリアアップ助成金はお店の社会的信用も高めるので、わからないことは社会保険労務士などの専門家に相談して、積極的にこの制度を活用するようにしましょう。