電話やWebで薬剤師から服薬指導を受けるのが「遠隔服薬指導」です。すでに体験したという方もおられるのではないでしょうか。
調剤薬局によるオンライでの遠隔服薬指導は、本来2020年9月1日に施行される予定でした。しかし新型コロナウイルスの影響で対面での服薬指導が困難になったことにより、当初の予定よりも早く2020年4月から全国での実施が始まっています。
今回は遠隔服薬指導により調剤薬局での薬の扱いがどう変わるのか、オンラインでの服薬指導の注意点などを詳しくご紹介いたします。
調剤薬局は病院にかかった時誰でもお世話になる場所ですから、しっかりシステムを知っておきましょう。
遠隔(オンライン)服薬指導ってどういうもの?
まずは遠隔服薬指導とはどういうものかをご説明します。
調剤薬局で薬を受け取る時は、薬剤師から服薬の指導を受けなくてはなりません。これまでは電話やWebなどでの服薬指導は認められておらず、必ず対面で説明を行うことが義務でした。
しかし、過疎地などでオンライン診療が行われた場合、患者は処方箋を受け取って自力で調剤薬局に出向かなくてはいけません。自由に身動きが取れない患者にとってこの方法はかなり負担が大きく、診療と同じように服薬指導も遠隔で行いたいという声が以前から多くあがっていました。
そのため2015年から、オンラインで診療を受けた場合などは、例外的に服薬指導も遠隔で行うことが段階的に認められるようになりました。
そして2019年に医薬品医療機器等法(薬機法)が改正されたことにより、2020年9月から全国的に遠隔服薬指導が導入されることになったのです。
新型コロナウイルスの影響で4月10日から特例として実施されている
遠隔服薬指導は、本来であれば2020年9月1日から始まる予定でした。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発令され、対面での服薬指導は困難になりました。
そこで遠隔服薬指導は本来の開始時期ではなく2020年4月10日から特例として全国で解禁されることになり、薬剤師がオンラインでも差し支えないと判断した場合に限り、電話などでの服薬指導が可能になっています。
遠隔服薬指導の方法
遠隔服薬指導は、その名の通り遠隔地から服薬指導を受けられる制度です。電話やWebといったオンラインで薬剤師から服薬指導を受けることができますので、調剤薬局に出向く必要がありません。
※ただし、原則として初回は対面で指導を受けることになっています。
遠隔服薬指導を希望する方は、診察を受ける医師にオンラインでの服薬指導がしたいと伝えてください。診察が対面で行なわれた場合であっても、遠隔服薬指導を受けることができます。
テレビ電話(ビデオ通話)での指導が望ましいですが、通信環境が整っていない場合は電話(音声通話)のみで服薬指導を受けても問題ありません。その後、お薬は宅配便で届けられます。
調剤薬局からオンラインで服薬指導を受けた日とお薬の到着日にはタイムラグが発生する可能性があるので、この点は事前に理解しておきましょう。
元は国家戦略特区内の事業だった「遠隔服薬指導」
遠隔服薬指導は、もともと「国家戦略特区(愛知県の一部、福岡県福岡市、兵庫県養父市)」」の中で行われていた実験的な事業でした。
離島や僻地では遠隔診療が普段から行われていたため、診療だけでなく服薬指導もテレビ電話などで行えるようにすることが望ましいと考えられていたからです。
その当時は特別に登録された30件弱の調剤薬局でしかオンラインの服薬指導ができず、オンライン服薬指導を受ける患者も10人程度しかいませんでした。
今後は全国的に遠隔服薬指導が行われるようになり、日本全体に定着していくことでしょう。
遠隔服薬指導を受けるために「電子お薬手帳」を用意しよう
これまでは紙が基本だった「お薬手帳」ですが、オンラインでの服薬指導を受けるためには「電子お薬手帳」が便利です。
QRコードを読み取ってスマートフォンやタブレットなどに全てのお薬情報が保存できますので、お薬手帳にシールを貼ったり記入する手間が省けます。
クラウドサーバーに保管されるアプリタイプのお薬手帳なら、調剤薬局側もこれまでのお薬の経過を確認することができますし、手帳を紛失する心配もありません。
体重や血圧の管理も簡単
電子お薬手帳には、市販薬の管理や血圧、体重などのデータも入力できます。
従来の紙のお薬手帳でも、手書きで記入すれば市販薬や血圧そのほかのデータを管理することは可能でした。しかし市販薬の名前を間違えて書いてしまったり、面倒でつい記入しないままにしてしまうこともあるでしょう。
電子お薬手帳なら、バーコードを読み取るだけで市販薬を登録できる機能があります。お薬を飲んだかどうかの入力もワンタッチで簡単ですし、飲み忘れ防止のためのアラームもセット可能です。
お薬や健康の管理が簡単にできますので、調剤薬局との連携も従来よりうまくできるようになることでしょう。
対面と同じクオリティで服薬指導を実施するための課題
オンラインで遠隔服薬指導を受けることができたほうが便利なのは間違いありませんが、導入が遅れていた背景には「対面と同じクオリティが実現できるのか」という課題があったといわれています。
確かに、対面で会話するのと電話で説明を受けるのとでは、情報量が全く違います。
対面なら簡単な資料を図示しながら説明することができますが、音声通話だけの場合、ちょっと複雑な説明をするだけでも非常に労力を要します。
ビデオ通話を使用すれば上記のような問題はある程度解決できますが、ご年配の方など、映像付きの通話に慣れていない方も少なくありません。
基本的に手元に薬がない状態で説明を受けなくてはならない
調剤薬局で対面の服薬指導を受ける時は、目の前にお薬がある状態で説明を受けることができます。
しかし遠隔服薬指導の場合、服薬指導を行ってからお薬を発送しますので、患者の手元にお薬があるわけでは限りません。
オンラインで服薬指導を受けた後にお薬を受け取っても、電話で説明を受けた内容がどのお薬のことだったのか、混乱してしまう可能性も考えられるでしょう。もちろん、手元にお薬が届いた後で改めて調剤薬局に電話で問い合わせることはできます。
ただ、これまでは基本的に一回で済んでいた説明を何度も行うことは、調剤薬局側にとっても患者にとっても面倒で負担がかかります。
こうした不満をどう解消するかも、今後の課題といえるでしょう。
ほかにも、配送中にお薬が変質や破損した場合はどうするか、さらには調剤薬局側のIT格差など、課題はまだ多く残っています。全ての人に同じクオリティでのオンライン服薬指導を提供するためには、もう少し時間がかかるのかもしれません。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、遠隔服薬指導は図らずも試験的な運用が始まることとなりました。2020年9月からは本格的な実施が始まりますが、調剤薬局の役割は今までと変わりません。
患者さんに安全にお薬を使ってもらうために必要な情報を提供し、不安を解消するための努力は、オンラインでも万全に行われる必要があります。
お薬を受け取る患者側も、オンラインの良いところを享受しながら、遠隔服薬指導の普及に向けて正しい情報収集をしていきましょう。
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